装備企画課
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十月一日。
新たな昇進と配属命令により、後方作戦本部装備企画課にも一名を迎え、少佐待遇のウォーカー事務官にも新しい部下が出来ることになった。
少し珍しい人事だった。
常に戦死者が出る前線とは違って、後方勤務でこの時期に人が入れ替わる事は少ない。
ましてやそれが事務職ではなく、現役の士官がこの時期に配属されることは稀と言ってもいいだろう。たまに前線で――何らかの理由によって――使えなくなった者が送られてくる事はある。
しかし、今回の人事はそうではないようだった。カプチェランカの戦闘により、一階級の昇進――部下の経歴を見ながら、ウォーカーは小さく息を吐いた。
確かに優秀である事は間違いはない。
だが、現場で優秀だった者が後方勤務でも優秀とは限らない。
むしろ優秀ではない可能性の方が高いとウォーカーは見ている。
ウォーカーの私的な考えではあるが、前線指揮で求められるものは何よりも柔軟性だ。敵の攻撃をあるいは守備をその場で最善を導き出し、遅滞なく行動する。それは大切なことではあるが、後方勤務においてはそこまで必要というわけではない。
求められるのは、綿密に練り込んだ事前の準備と数字一つを間違えない繊細さだ。
戦いが始まった時点で後方勤務の仕事は全ては終了しているといっても良い。
だからこそ、間違えられない。
前線指揮で優秀だった者が、後方勤務にも優秀であるわけではなく、またその逆もしかりであった。事実、ウォーカーも幾人かの軍人と仕事を共にしてきたが前線指揮に名をあげた士官が後方勤務に配置されて潰れる様を見てきたし、後方勤務で優秀だった者が前線では無能と呼ばれていることも知っている。
そのバランスが一番取れていたのが、今は虜囚となったアーサー・リンチ少将であった。
ウォーカーも彼の下で働いたことはあったが、仕事は確かに出来る。
だが、その過程で責任を下になすりつけるとこもあって、エルファシルの一件では勿体ないと思いながらも、さもあらんと感じたものである。
思考が脱線した事に気づいて、ウォーカーは手元の資料を見た。
彼に与えられる最初の任務は、装甲車における脳波認証システムの改修。
つまりカプチェランカで、彼が発見した不具合を何とかしろという非常に大雑把なもの。
一見すれば難しい――しかし、その実態は時間制限がある細かい仕事ではなく、ある程度の余裕のある仕事を与えて後方勤務の仕事を学べと言うことだ。
同盟軍に配備されている装甲車は、それこそ星の数ほどもあり、管理されているものだけでも一つの棚が埋まる。その中から問題の装甲車を選択し、改修のための予算を確保し、実際の改修案を出す。
それはウォーカーのような後方一筋で長年勤務をしていたものであっても、一
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