装備企画課
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年で行うのは難しい。手動での切り替え要領が周知された今では脳波認証に妨害があった場合でも、動けなくなるのは一瞬で、緊急の課題ではないと判断されたからかもしれない。半年ほどは彼一人で改修計画を作成しつつ、後方勤務を学び、その後に、課に人員を増やして一気に全面改修となるだろう。
そんな考えを打ち切ったのは、ノックの音と声だ。
ベレーの制帽を片手に持って、静かに頭を下げたのはまだ若い少年。
鮮やかとは言えない金髪と鋭い眼差しが印象的な少年だ。
本来であれば士官学校を卒業して半年余りの若造――しかし、その目に薄く刻まれた傷が穏やかな雰囲気を消している。
若造とは違う強い雰囲気に、女性陣が小さく息を飲むのが見えた。
やれやれ――面倒事がさらに増えそうだな。
そうため息を吐いたウォーカーの予想はあたる事になる。
ただし、その原因は予想だにしていないことであったが。
+ + +
「ということで、原因の特定と改善を年度末までにお願いいたします」
柔らかな表情で語られる言葉。
対照的に正面に座る二人の男――年配の男性はしきりに汗を拭い、若い男は顔を青くして書類を握りしめていた。
「いや。それはあまりにも――」
「そうですね。大幅な改修になるでしょうから、期間が短いのはわかります。では原因の特定のみを年度末として、改善については原因を考慮しながら期間を設けるということでいかがでしょう?」
優しげな口調。しかし、その瞳は睨みつけるように二人を見ている。
その視線から逃げるように、男――フェザーンを資本とするアース本社の営業課長であるトゥエインは書類に視線をおとして、再び額に浮かぶ汗を拭った。
なぜ、こうなった。
直接的な原因は、隣に座る若い男だ。
若いといっても、営業部に配属されて十年が経過し、それなりの経験を積んでいる。
会社も、そしてトゥエイン自身も、彼には期待し、いずれは幹部になるだろう器だと思っていた。
そもそも今回の脳波認証システムの不具合についても、それを納入したアースが呼ばれる事はわかっていた。それをあくまでも予想しない不具合であると責任を突っぱねながら、原因の特定と改修は手伝い、そこから利益を得る方針が決定している。
そんなアース社に声がかかったのが、十月の半ば。
腰の重い政府にしてみれば、随分早い対応であり、準備が遅れていたのも事実。
それでも営業も知らない士官学校卒業の若造であれば、上手く言いくるめられるだろうと、大仕事の経験を積ますことも考えて、隣に座る男を派遣した。
結果は惨敗だった。
手にした書類を眺めて、トゥエインは息を吐く。
それは納入時の契約書だ。
細かく数百ページにも渡って記載された契約項目の中で、たった
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