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うどん
第一章
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がこう妻に答えた。
「ああしたものじゃないっていうのは」
「日本のヌードルよ」
 あらためてこう夫に説明する。
「美味しいらしいわ」
「らしいの」
「私も食べたことはないのよ」
 実はそうなのであった。ワンダにしろアレンにしろ日本語は学んでいるがそれでも食べ物までは学んでいないのである。それはこれからであったのだ。
「だから。はじめてよ」
「じゃあ食べてみる?」
「ええ。お箸だけれどいいわよね」
「一応は」
 やはりぼんやりとした返事であった。
「いけるよ」
「だったらいいわ。行きましょう」
「うん」
 こうして妻の後について行く感じでその店の中に入った。店の中もまた和風そのものであり畳の座敷の席もあれば木造の椅子やテーブルの席もある。カウンターもまた木造であり二人にとっては実に新鮮で目を奪われるものがあった。既にこの日本で何回も見ていても。
「何処に座ろうかしら」
「カウンターがいいんじゃないかな」
 アレンはこうワンダに提案してきた。
「そこに二人でね」
「そうね。それでいいわね」
「うん。それにしても」
 アレンは店の中を進みながらその中を見回していた。見回すと共におしながき、つまりメニューを見ていた。そのうえでまた妻に言ってきた。
「ねえワンダ」
「今度は何なの?」
「力うどんって何なのかな」
「力うどん!?」
 力うどんと聞いて逆にワンダの方から声があがった。
「何なの、それって」
「知らないの?」
「ええ、全然」
 返事はこうだった。
「全然知らないわ。けれど面白そうだね」
「うん」
「じゃあ私はそれにするわ」
 ここで丁度カウンターのところに来た。いい具合に席が空いていた。
「力うどんね。あなたはどうするの?」
「そうだね。僕は」
 二人は椅子を引いてそこに座る。座りながら話を続けていた。
「あれがいいな」
「あれっていうと」
「ほら、ビッグうどん」
 メニューの端にそんな名前のものがあった。
「あれがいいよ」
「やっぱり量なのね」
「だからお腹が空いて仕方がないんだよ」
 こう述べて右手で実際にそのお腹を押さえてみせる。表情も困り果てたものになる。
「本当にね」
「仕方ないわね、そればかりは」
「人間食べないと死んじゃうよ」
 続いての言葉はこうであった。
「だからさ。余計にね」
「わかったわ。じゃあそれね」
「うん」
 これで話は決まりであった。二人はそれぞれメニューを注文した。それで出て来たのは。
「あらっ」
 まず声をあげたのはワンダだった。
「力うどんってこれだったの」
「あれっ、これって」
「お餅よ」
 ワンダはこうアレンに答えた。見ればワンダの前にあるうどんには白い餅が数個浮かんでいる狐色と黒の焼けた色がまた実
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