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SAO−銀ノ月−
第六十六話
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葉の意味がちょっと違うけどね――と、俺の顔を見たリズは一瞬だけ表情を曇らせた後、もう一度強く俺の手を強く握り締めると、リズは訥々とそう言葉を話しだした。もう片腕にはメイスが同じように握られていて、彼女は戦う気だということがありありと証明されていた。

「あたしだって何か手伝える。もうアインクラッドの時みたいに、見ているだけなのも、苦しんでても助けられないのは嫌よ……もう待ってるだけなのは!」

 訥々とした喋り口から徐々に熱が籠もっていく。彼女がアインクラッドの時から抱え込んで来ていた、自分は一緒に戦うことは出来ない――という悩みを。もちろん、彼女の支援や笑顔があってこその攻略だと、今更言われなくても俺もリズも分かっている。だが、これは分かっていてもどうしようもない、理屈ではなく感情の問題なのだ。

「……我が儘を言ってるみたいで悪いけど、ね。あたしだって、ショウキが勝てない相手に勝てるだなんて思ってない。だけど、あんたが苦しんでるところを見てるだけなんて真っ平御免よ!」

「……それでも、相手はあのPoHだぞ」

 今にも黒煙に向かって走って行きそうなリズを掴んだ手で引き留めながら、震える声で――普通に声を出したつもりだったが――リズへと問いかける。彼女はその問いに対し、何ら思考する時間をかけることなく、まさに一瞬で答えたのだった。

「だから何よ?」

 今から相手をするのは殺人鬼だと質問したにもかかわらず、リズのそのあっさりとした答えに、こちらがキョトンとした様子になってしまう。俺のそんな様子に構うことはなく、リズはさらに言葉を続けていく。その様子は俺とは対照的に、メイスを握った手をプルプルと振るわせていた。

「相手が誰だって関係ない! アスナを助けるのを邪魔して、ショウキをこんな目に合わせるなら……あたしにだって敵よ!」

 ――彼女が感じているのは怒りだ。何の混じり気もない人間固有の感情を、彼女は奴に対して感じていた。友人の為ならトラウマがある場所にでも飛び込み、相手が殺人鬼であっても関係なく、友人の為ならば恐れることなく向かっていける。それが彼女の、リズの強さでもあり、優しさでもあり、危うさでもあり……俺が、リズのことを好きなところだ。

「ありがとな、リズ」

 アインクラッドの時より幾分も小さい彼女の頭を、上からがしがしと乱暴に撫でていると、ポーションによるHPの回復が完了する。そして未だに健在である、橋の向こうの黒い煙に向かって走り始めた。そのまま手を繋いでいたリズも巻き込まれながら、二人で橋をひた走っていく。

 『たまには迷わず、ただ真っすぐに進んでみろ』――父の言葉が、今さらながら思い出されていく。デスゲームだとか、殺人鬼だとか、アインクラッドだとか、やるべきこととか、ゲームだとか、そ
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