第六十六話
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リズの叫び声のような声と、復帰した場所の目の前にいた奴の、煌めく銀色の包丁で俺は悟る。……奴の挑発にまんまと引っかかったのだと。迫る死神の鎌のごとき奴の包丁に対し、橋の上に飛び込んだ俺にその一撃を避ける術はない。
「くっ……!」
俺を貫かんと迫る白刃。すり抜けるとしても抵抗しない訳にはいかず、手に握ったままの日本刀《銀ノ月》を、俺の肩口へと迫り来る包丁へと振るう。……しかし、その包丁と日本刀《銀ノ月》が交差することはなかった。すり抜けていった、ということではなく、奴が俺から飛び退いて距離を取ったからだ。
その理由は、俺と奴の間に放たれた黒色をした魔法の塊。突如として現れたソレを警戒して飛び退いた奴のことを、弾速はあまり速くないものの少しだけ追尾したが、やがて力尽きたように橋に着弾する。
……そして着弾した橋からは、その魔法と同じ色をした黒色の煙がモクモクと広がっていく。俺はその煙の中で、レコンが放った煙幕だと察すると、日本刀《銀ノ月》を握っていない方の手を握られた感触を感じた。日本刀《銀ノ月》を鞘に仕舞いながら、俺はその慣れた感触の手に引っ張られながら、黒い煙の範囲外に出て行く。
「……大丈夫なの、ショウキ?」
俺を黒い煙から引っ張り出したのは、やはりというべきか、リズであった。彼女らも、俺が人質同然になっていて身動きが取れないながらも、作戦を考えてくれていたらしい。レコンが魔法かアイテムかによってあの黒煙を作り出し、奴を攪乱してリズが俺救い出す、という。……結果的にそれが功を労し、俺は今こうして奴から距離を取れた。
「あ……ああ、大丈夫だ。レコンは?」
しかし、あの黒煙を発生させたはずのレコンの姿はここには見えなかった。とりあえずまだ橋の上だが黒煙から充分に離れると、リズは指を奴がいる黒煙の方に向ける。
「敵の足止めをしてみるって、あの黒い煙の中よ。あたしたちには、先に逃げてって言ってたけど……」
「……そんなわけにはいくか」
レコンのスニーキング技術が高いことは、ここまで一緒にパーティーをやってきて、充分に良く分かっている。俺たちがこうしていられるのも、レコンの魔法とそれ以外のスニーキング技術によるところが大きい……が。今戦っている奴に対して、俺は安心することなど出来やしない。
レプラコーン寮で買っていた回復用のポーションをグビリと飲みながら、日本刀《銀ノ月》の状態が歪んでいないか確認すると、もう一度黒煙に向かおうと態勢を整える。……しかし、今なおも続く十字傷の痛みも合間って、奴には勝てないのだと……それこそ呪いをかけられたように、そのイメージが俺の頭の中を支配していた。
「ねぇ、ショウキ……あたしは、あんたとアスナを助けにこの世界に来たの」
助けるって言
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