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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十八話 新秩序
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ェザーンか」
ヴァレンシュタインが頷いた。

「しかしフェザーンは独立しただろう。勝者じゃないのか? 敗者とは言えないはずだ」
ヴァレンシュタインが今度は声を上げて笑った。
「今回の首脳会談は宇宙の、人類の未来を変える会談だったんです。しかしその場にフェザーンのペイワードは居ない。同盟も帝国もフェザーン抜きで未来を決めました、フェザーンを独立させるという事を含めてね。フェザーンは独立を勝ち取ったんじゃない、与えられたんです。それでも勝者ですか?」
思わず唸り声が出た。そういう見方が有ったか。

「それにフェザーンは自治領といっても内実は独立国でした。帝国にとってフェザーンを失う事は致命傷でもなんでも無い」
「……」
元々フェザーンにとって独立は必要不可欠なものでは無かった。自治領で十分だったのだとヴァレンシュタインは話し始めた。

フェザーンが独立を求めたのは同盟軍がフェザーンを占領した後に独立を保障すると声明を出した事、そして帝国に対する反発からだった。帝国の自治領である事に感情面で我慢が出来なくなったのだ。だがそのためにフェザーンは様々な物を失う事になった。自治領に甘んじていれば帝国に対しては損害賠償の請求権、同盟に対しては国債の返還を求める事が出来ただろう。だが独立を望んだが故にそれらは全て放棄させられた……。

「しかしそれで帝国が勝ったと言えるのか? フェザーンからの損害賠償の請求は無くなったが同盟に対しては国債を償還するんだろう。向こうにとっては屈辱だと思うが……」
ヴァレンシュタインがまた声を上げて笑った。

「賠償金じゃありません、国債の償還です。借りたものを返す、当たり前の事ですよ」
「それは分かるが」
「十二兆帝国マルクの内償還するのは九兆帝国マルク、しかも償還には九十年かけます。戦争が無くなれば人口も増加する、当然ですが通貨の供給量も増えますし物価の上昇も有る。九兆帝国マルクの国債とは言いますが実際の貨幣価値はもっと下がるでしょう。それでも屈辱ですか?」

なるほど、そういう事か。同盟は自国の国債を回収し帝国から国債の償還を受け取る。帝国は自国の発行した国債を圧倒的に有利な条件で償還する。そしてフェザーンは国債を全て失った。同盟、帝国が実利を得ているのに対してフェザーンは形ばかりの独立という名を得ただけだ。確かにフェザーンは勝者とは言えない。

「イゼルローン要塞はどうなんだ?」
「戦争が無くなれば軍事要塞の価値は激減します。国際協力都市と利用した方が遥かにメリットが有りますよ。商船が入港するだけで入港料を取れるんですから」
「……」
俺が納得していないと見たのだろう、ヴァレンシュタインが言葉を続けた。

「イゼルローン回廊を全面開放すれば同盟も帝国も目の前に巨大な新市場が現れるん
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