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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
蒼き魔女の迷宮篇
22.蒼き魔女の迷宮
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キーストーンゲートの屋上を不気味な触手の群れと真紅の瞳を持つ獣が取り囲む。
監獄結界の解放を阻止するために古城と雪菜は、優麻を追って監獄結界へと向かった。
「ああもうっ! しつこいんだけど、こいつら──!」
紗矢華の怒声が響く。
強力な魔術に守られた触手たちを、紗矢華の“煌華麟”は容易く切り裂く。しかし数が多すぎる。
しかし、魔法陣から無尽蔵に湧き出るそれらに阻まれ、姉妹の魔女に近づけない。
「たしかに、これではキリがありませんね」
「全くその通りだね」
ラ・フォリアと友妃が、不機嫌そうな表情を浮かべる。
ラ・フォリアの呪式銃は、触手の防御魔術の影響で、本来の力を発揮できない。友妃の刀も同様に触手は切り裂けても召喚者に近づけない。
彩斗の黄金の梟が触手を貫けば、一撃である程度は吹き飛ばせるが漆黒の獣がそれを阻む。
「“守護者”の枝……と言いましたね」
彼女が、不意に思い出したように呟いた。
それは姉妹が何気なく口にした言葉だ。
「軟体動物ではなく、植物ですか……」
ふふっ、と愉快そうに王女が笑う。
「なるほど。メイヤー姉妹が引き起こした事件で、巨大な森が一夜にして消滅した出来事がありましたね」
「“アッシュダウンの惨劇”ですか」
紗矢華が呟く。
「“アッシュダウンの惨劇”?」
「今から十年前位前に欧州の西北、北海帝国の都市アッシュダウン近郊で、メイヤー姉妹が起こした都市周辺の森が消失した事件だよ」
友妃が淡々と事件の内容を口にする。
「まさか……じゃあ、この“守護者”の正体は……」
「ええ。失われた森の木々がすべてが、悪魔の眷属として怪物化した姿だと考えれば、この圧倒的な質量にも得心がいきます。いくら切り倒しても、無駄でしょう」
ラ・フォリアは肩をすぼめる。
「……ですね」
紗矢華は構えていた剣を降ろす。攻撃しても無駄だと悟ったのだ。
「あらあら。小娘どもが何か囀っているみたいですわ、お姉様」
「ええ、本当に。命乞いの相談でも始めたのかしら」
無駄なことを、と二人の魔女が耳障りな声で笑う。
勝ち誇る彼女たち。
「いいえ。思ったよりも、つまらない仕掛けでした、と申しているのです」
「そうですね。属性がわかってしまえば、打つ手はいくらでも」
「だね。おばさんたちの触手とあの獣を倒して早く雪菜たちを助けに行くよ、彩斗君」
挑発を軽くあしらわれてしまったことで、決定的にプライドが傷ついたのだろう。
彼女たちの怒りに反応して、“守護者”の攻撃が激しさを増す。
ラ・フォリアは優艶な微笑を浮かべたまま、黄金の拳銃を構えながら彩斗へと歩み寄る。
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