§57 使徒と巫女
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「今回は賭けしてるのにねぇ」
思わず口に出た呟きは友人としたものだ。試験で点数の一番低かったものが一人カラオケをする。指定されている店は学生の遊び場として有名であり、一人でカラオケでもしようものなら恥ずかしさと虚しさ、情けなさで死んでしまう。何が悲しくて同性の友人と馬鹿をやったり恋人がらぶらぶしている横で一人歌わなければならないのか。
「……やっぱ帰るか」
想像しただけで寒気がする。やっぱり、帰ろう。そう思って踵を返す。そんな時――
「味噌は冷凍!! 味噌は冷凍!!」
意味不明な事を口走る少女を見た。味噌を冷凍してどうなるのだろう。
「ちょっと冬姫ちゃん……」
注目を浴びた為か隣の子が必死に宥めているようだ。まぁ、歩道橋の上から下の道路に向かって叫べば嫌でも人目を集めるだろう。当然の話である。ましてや今は夕方だ。
「話を聞きなさいこんの糞味噌は!!」
「ちゃんと味噌買って来たから静まってよぉ……」
「その味噌じゃないの!! この糞味噌!!」
電波過ぎる。味噌と会話しているのかあの少女は。彼の視力では顔はわからないが、おそらく近隣の高校生ではないだろう。制服が違う、気がする。いや相手は歩道橋の上だしよくわかんないけど。
「……はぁ。こんなトコに居たんですか」
耳を癒すような声が後ろから聞こえる。周囲の男がざわめいて、彼の後ろを凝視する。なんだ、どうした。目の前のオモシロ光景を上回る何かがあるというのか。まぁ、まずは眼前の光景をネタにして、だ。
「変人見つけたなうwww……と」
SNSに呟きつつ、後ろを見て、硬直。
「注目浴びてあの子達は……」
女神が、いた。彼と同じ高校生だろう年齢に見えるが、圧倒的な美貌。二次元がそのまま三次元に出て来たかのような。普通二次元をそのまま三次元化すると不気味な顔になる、と言われる。だが彼女は違う。二次元の美貌を三次元に適用した、とでもいうべきか。ここまでの人にはちょっとお目にかかれない。テレビの中にもまずいないだろう。生憎テレビなんて最近見てないから、一般的な有名人の顔面偏差値なんてわからないけど。
「……」
言葉に出来ない、とはこういうことを言うのだろう。紫色の長髪なんて、三次元で見てもけばけばしいだけだと思っていた。蛍光塗料をふんだんに使った。でも、彼女の髪は違う。自然なのだ。自然な紫の髪、というのも大概おかしな話だけれど。違和感のない、ごく当たり前に見える、それでいて本人を魅力的に映すような紫の髪。目の前の光景全てが信じられない。声最高、顔最高。おまけに、服の上からでもわかる魅力的な双丘が彼の眼を釘づけにして離さない。華奢な身体に似合わぬ巨大なそれは、凶器以外の何物でもない。
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