§57 使徒と巫女
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が、こちらの方が早い。天叢雲と蛍火と。二つを持つことで神憑りの際の隙はほとんど消える。呆れるばかりの出鱈目な速度で、神憑りが完了する。
「さっきまでとは一味違うよ!」
黎斗の権能に神憑りに。二重に強化をした今の恵那の身体能力は人外の化生をも上回る。
「単純に身体能力に任せての力押しは芸が無い、けどねッ!!」
「ぬうっ……!!」
二天一流、流れるような二つの刃は、もはや彼を圧倒し、その身に傷を刻み込む。傷の治りが早いのが気になるが、回復よりこちらの一撃の方が疾く、重い。
「小娘が……!」
魔術を唱えようとすれば口を裂き。剣を振るおうとすれば腕を斬り、逃げようとすれば足を凪ぐ。怒涛の連撃に、相手の再生が間に合わなくなっていく。
「これで、終わりッ!」
気合一拍。右の太刀が男の首を斬り飛ばし、左の太刀が男の心臓に突き刺さる。
「――!!」
目を大きく見開いた首が、くるくる廻る地に落ちる。
「はあっ、はあっ……」
また、それと同時に恵那が床に膝をつく。いかな彼女と言えども、身体を酷使しすぎた反動が来たのだ。限界一歩手前で、半ば意地で立っていたようなもの。
「天叢雲、ありがと」
礼を言う頃には、相棒の姿は恵那の手から消えていて。きっとあの少年の元へ帰ったのだろう。剣へは思念がなんとなく伝わるから、彼の方へは改めて、今度お礼を言いに行こう。
「なんか、初めてれーとさんの役に立てた気がするぅ……」
日常生活に置いては完全無欠に駄目人間な黎斗だが、非常時には頼りになりすぎる。今までおんぶにだっこだったが、今回は一応役に立った。この達成感が、困難な事態を打破した充実感に拍車をかける。
「てて、まだ終わってないんだった」
息を整えて恵那の歩く先には、腰を抜かした大勢の魔術師と、意識を抜かした大量のその他一般人。はてさてどうしてくれようと、悩んだ末に言葉をなんとか捻り出す。出てきた言葉は陳腐なもので。その実、さっきも言ったような気がしないでもない。
「……投降、する?」
今度は後ろから攻撃してくる存在は無いかな、などと思っていれば。
「!?」
凄まじい振動とともに、ビルが地下に埋まって行く。窓から外を見やれば、まるで地下に大迷宮があるかのよう。地下に存在する大迷宮の中心にビル。口にすればおかしな事態。なんとなく、恵那はこれが黎斗の仕業であることを直感する。
「……お許しを。神殺しに仕える巫女殿」
魔導師達が降参したのは当たり前過ぎて、特筆すべきことなど無い。
●●●
――時刻は若干前後する。
その日、彼は街を歩いていた。定期考査を前にして我ながら余裕だな、などと苦笑する。
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