暁 〜小説投稿サイト〜
SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
第二章  曇天の霹靂
7.打ち砕かれる自信
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 ――PoH(プー)

 目の前の、フードをすっぽりと被った暗色のローブ姿の男の発言に、俺は意味が解らず、棒立ちのまま頭の中でその名を無意味に繰り返していた。
 混乱。一言で今の俺の状態を言えばそうなる。

 ――何故、名前を偽っていたんだ?

 ――何故、仲間が窮地に陥っているのを嗤って見ていたんだ?

 ――本当にノリダーさんを殺したのは彼なのか?

 ――もしかしてパラリラさんの死にも何か関係しているのか?

 ――この男は一体、何者なんだ?

 疑問が渦巻き、不安が心に滲んでくる。
 師匠に感じていた恐怖とは違う。得体の知れないモノへの訳が解らない忌避感を、俺は眼前の男から覚えていた。

「おいおい。いいのかよ?」
「……?」

 片手の掌を上に向け、不快に歪めた口からPoH(プー)が呆れたような声を漏らす。
 不意のその声が己に問うていたことに気付くことが一瞬出来なかった。

「助けに来たんじゃねぇのか? ――奴ら、死ぬぜ?」
「っ!?」

 その言葉で俺はラピリアさんたちの現状を失念していたことい気付いた。

 ――そうだ、彼女たちはモンスターに囲まれて……!!

「うわあああああ!?」
「こ、コン!!」

 その時、一際大きな叫び声が上がった。
 すぐさま俺は二人がモンスターに囲まれていた場所に視線を向ける。
 そこには――――



 パリィィィィ…………ン



 青い光の粒子が虚空に溶けていく場所に、顔を絶望に歪めながら手を伸ばしていたラピリアさんが居た。否、ラピリアさんしか居なかった。

 ――コンペットさんは……!

 さっきまで居た彼がどうなったのか、そんなことは確認するまでもなく解っていた。
 瞬時、頭に湧いたのは自責の念。俺が脇目も振らず助けに入っていたならばもしかしたら彼は死ななかったかもしれない。

 ――俺の行動が人を死に追いやった。

 体が重くなる。
 もし、あの時こうしていれば。たらればの想像がぐるぐると脳裏を駆け廻る。
 圧し掛かる重みに身を委ね、地に全てを擲って頭を抱えたくなる。

「……だが!!」

 ラピリアさんはまだ生きている。
 依然としてモンスターに囲まれてはいるがそれでもまだ生きるために必死に抵抗している。助けに向かうことが出来る。
 一旦、PoH(プー)と名乗る男のことは捨て置く。今は何より彼女の救助が先決だ。
 俺は一直線にラピリアさんの元へと駈け出す。

 ――が。

「おっと、そいつぁいけねぇ……ナァッ!」

 背後からその声が聞こえたと思った同時、後方より赤光の一閃が俺の横を駆け抜けた。

 ――投剣ソードスキル!?

 放たれた投擲用ナイフ
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