SAO編
第二章 曇天の霹靂
7.打ち砕かれる自信
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……!
現実世界とは違う、ステータスやスキルの効果、装備などの様々な要素が詳細に組み合わさって出来ている世界。
武術だけでは……この十六年ひたすらに鍛え上げてきた東雲流の技だけでは――――勝てないっ!!
「じゃあな――――」
「キリュウさーん!!」
「――?」
PoHが短刀を振り下ろそうとしたその時。
遠くから、ルネリーの声が耳に届いた。しかしそう遠くでもない。あと数分で此方へ来る距離だろう。
眼前の奴の動きが止まり、声がした方に視線を向ける。
「……ほう」
厭らしく、フードの下の口元が歪んだ。
その笑みに、俺は瞬時に奴の考えを悟った。
「クックック……丁度良い。あの娘たちにお前の最後を見せてやろうか。なんとも最高の表情をしてくれるとは思わないか? ナァオイ」
その言葉を聞くと同時、体中が熱く燃え滾った。
――この男は、彼女たちまでも手にかけるつもりなのか……!!
己が武術が通用しなかった無力感に打ちひしがれている場合ではない。
今、恐らく生まれて初めてだろう激しい感情が俺の体の中を駆けまわっていた。
《怒り》。そして《殺意》。
これほど人を殺してやりたいと思ったのは初めてだ。
俺は目の前で嗤う男を睨んだ。
「――ッ!!」
「Wow……まさかこのシステマチックな世界で、殺気なんていうファンタジックなものを感じるとは思わなかったぜ」
少しだけ俺との距離を取るPoH。しかしシステムメニューを開こうとしたり、逃げようとでもするのなら、すぐさま飛び掛かってこれる位置だ。
「Humm……気が変わった」
「?」
力を抜いて、突然PoHが構えを解いた。
「貴様たちを生かしておいてやろう。取り敢えず、今のところは」
そんなことをのたまった。
「……どういう、つもりだ」
「なに。貴様らは今しばらく生かしておいたほうが面白そうだと、そう思っただけだ」
「…………」
意味が解らない。
この男の言っていることは一つとして俺には理解が出来ない。
PoHは外套を翻し、片手を上げた。
「ああそうだ。ひとつだけ言っておこう」
そして首だけ振り返って俺を直視しながら、
「次、遭ったその時には……ちゃんと殺してやる。あの娘たちもな」
「!!」
クッ、クッ、クッ、クッ、クッ…………
そう言って、静かに嗤いながら、ゆっくりと、木々の暗闇の奥へとPoHは消えていった。
俺はそれを、ただ唇を噛み締め、無言で見ていることしか出来なかった。
「あ、キリュウさーんっ!」
「キリュウさん!」
「おー居たッスね! 探したッスよー!
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