SAO編
第二章 曇天の霹靂
7.打ち砕かれる自信
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は何故か俺とラピリアさんの中間に位置する木へ向かって飛来していく。
「? ……!?」
突如、ナイフがその軌道を急激に変化させた。
――木の幹の表面にナイフの腹を当てて……!?
駆けながらその芸当に驚く俺を置き去りにして、ナイフはモンスターたちに孤軍奮闘しているラピリアさんへと吸い込まれた。
「え!? ……あぁ、くっ」
ラピリアさんの太股に突き刺さるナイフ。同時に彼女の動きが目に見えて鈍くなっていく。
――麻痺毒か!?
木々の合間に見えたは、全身を痙攣させるラピリアさんが目を見開いた絶句の表情でモンスターに囲まれる様だった。
俺の視界に映る彼女の全身が、周りのモンスターたちによって埋められていく。
――あと、約二十メートル!
「……!」
その時、俺とラピリアさんの目が、合った。
彼女の口が微かに開閉する。
た す け て
直後。ラピリアさんの体がモンスターたちによって埋め尽くされた瞬間。
先ほど見たような青い光の粒が、花火の様に弾けて消えていった。
「なん……!!」
力が抜けるように止まる足。
間に合わなかった。間に合わあせることが出来なかった!
――また、助けられなかった……っ。
身内の祖父の死は経験していたが、知り合いの死というものが、これほどまでに自分の精神に負の影響を与えていることに単純に驚く。
常日頃心掛けている冷静さが保てない。
「ぐっ、う……!」
駄目だ。飲み干せ。己が感情を。
観測地点を中央に置け。三六〇度周囲を並行して見渡せ。
時間、天候、地形、状況、他人、自分の感情、体調すらも第三者視点で観測。
視点を変えることで見えてくることもある。偏見に満ちた個人の視点では視野が狭まり単純なものでも気付かなくなることに、視線を向けることが出来る。
――そう。
「くく……」
背後から静かに嗤いながら近付く、この男に。
「…………PoH」
「敬称はやめたのか? ――まあ、別にいいがな」
ゆらりと暗色の外套を揺らし、五メートルほど手前で立ち止まるPoH。
俺は改めて彼の男を見た。
――昨日一昨日と感じていた雰囲気がまるで変わっている。
一言で表わすとしたら、昨日一昨日の雰囲気は《寡黙》。今の雰囲気は《不気味》だ。
長身痩躯。180は越えている身長に細長い四肢。先ほどの投剣からして、
身を覆う外套に暗器を隠している可能性あり。
目深に被ったフードから微かに覗く顔は能面の如く薄ら嗤いを浮かべている。
相手が何を考えているのかは、状況、表情からも推測出来ない。
――まずはこの男の真意を量る。
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