暁 〜小説投稿サイト〜
シルエットライフ
幽霊の話
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た。
どちらの屋上も、基本的に立ち入り禁止だった。常に屋上の扉には鍵がかかり、誰も入れなかった。

その日の昼食の時間、僕はB棟の屋上へと向かった。
クラスの教室は、一人の男子生徒が複数の女子生徒と交際していたのが学校の裏サイトで暴露され、話題騒然となっていたからだ。
その生徒が今にも泣きそうな表情で、まるで子供を殺された親のような剣幕で詰め寄る女子たちに対し、しどろもどろに弁明していたことを思い出す。
父と母の夫婦喧嘩を昔から聞いていたせいか、騒音は苦手だった。人の口から発せられる騒音なら、なおさらだ。

母が作ってくれた黒い弁当箱を小脇に抱え、B棟の屋上へ向かった。
僕のクラスの教室は、A棟の西側にあった。B棟への連絡通路は東側にあったため、そこまで歩く必要があったが、
不思議と教師にも他の生徒にも遭遇することはなかった。

屋上の扉の前で弁当を食べようと思っていた僕は、屋上の扉が少しだけ開き、暗い踊り場に細い光が差し込んでいたことに驚いた。
驚いて、それから、喜んだ。なんだか知らないけど、ついてるぞ。

浮足立ちながら、ドアノブをしっかりと掴み、勢いよく開け放った。
じりじりと、屋上を、僕の身体を、大地を舐めるように降り注ぐ太陽の光に、うひゃあ、と間抜けが声が出た。
あの暑い日差しに立っていたことは、思い出すたびに、その場面まで時間が逆戻りしたかのように頭の中で再生された。

あまりの暑さにすぐに参ってしまい、日陰になっている場所まで避難したところで、不運なことが起きた。
制服のズボンのポケットに入れていたスマートフォンが、地面に落ちてしまったのだ。
スマートフォンと屋上の床がぶつかり、擦れあう音に、悲鳴を上げそうになった。
慌てて拾い上げ、傷を確認しようと思った。そうして踏み出した足がスマートフォンに当たり、今度は金網フェンスの下を通り、屋上の端まで滑っていってしまった。
屋上は転落防止のためなのか、魚を入れる水槽のように、隙間なく金網フェンスに覆われていた。

金網フェンスの向こう側へ行ってしまったスマートフォンを見て、絶望的な気分になった。
指を突っ込んで引き寄せようにも、その微妙な隙間に指が挟まってしまった。

仕方なく、金網フェンスの網目の部分に手を掛け、足をかけ、ロッククライミングをするかのように登った。
今思えば、棒か何かで引き寄せればよかったのに。
不運の連続で、判断力が低下していたのだ。

一瞬、転落死への恐怖に駆られ、金網フェンスにしがみつくような姿勢のまま静止したが、それからまたすぐに動き出した。
僕は人より、少し身長が高く、足も長かった。だから、ちょっと足を伸ばしてスマートフォンを軽く蹴り、金網フェンスの中に戻せば済む、と思っていた。
そういった慢心と恐怖と、ス
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