第二十一章
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第二十一章
最早会社で彼を相手にする人間はいなかった。誰もが嫌悪の目で見てそのうえで露骨に嫌な顔をする。そうして無視していた。
岩清水もだった。何かと理由をつけてだった。総務部の面々にこう言うのであった。
「どうしても空気が悪くなりますよね」
「そうだね」
「本当にね」
総務部の面々も彼の言葉に頷く。そうしてから自分の席で暗い顔になっている小笠原をじろりと見る。そのうえでわざと彼に聞こえるようにして言うのであった。
「俺最近子供に教えてるんだよ」
「私もよ」
「何てですか?」
「いじめだけはするなってね」
「そういつも言っているわ」
岩清水の言葉に応えてであるのは言うまでもない。やはり小笠原をじろりと見ながらそのうえであえて聞こえるようにして言っていた。
「それは最低の人間のやることだってな」
「親子の縁を切るってね」
「けれどあれですよね」
岩清水は何気なく、あえて小笠原に対してではなく素っ気無くを装って述べる。ここでも何も知らないしわかっていないふりをしている。
「そういう人に育てるっていう親も」
「そうだよ、だから教えてるんだよ」
「親として失格よ」
誰もがここぞとばかりにこう主張した。
「だから何があってもだ」
「いじめは許さないわ」
「そうですよね。ほら、人の教科書に落書きしたり捨てたりとか」
あえて小笠原の過去を総務部全体に聞こえるようにして言う岩清水だった。
「机に接着剤塗ったり」
「人間のすることじゃないな」
「屑ね」
「そんな屑な人が会社にいますかね、我が社に」
「いたら恥だよ」
「何があっても許さないわよ」
岩清水の言葉に乗って誰もが言い。そのうえで小笠原を睨み続けていた。
「まだ会社に来ているかも知れんけれどな」
「恥知らずなことにね」
「幾ら勉強ができてもですね」
岩清水の今の言葉はこれ以上はないまでにはっきりとした小笠原へのあてこすりであった。やはり彼は何もかもわかってやっていた。
「駄目ってことですね」
「成績がいいから妬むとかあるんじゃないか?」
「嫌な話だけれどね」
「そうそう、それでいじめをする人間って」
言いながら小笠原の後ろに来る。彼は完全に沈んだ顔で俯いて何も言わない。仕事も与えられなくなりただいるだけになってしまっているのである。
その彼の後ろに来てだ。岩清水はさらに言うのであった。
「例えばですね」
「うん、例えば」
「どうなの?」
「人の背中から髪の毛に火を点けたりとかですとね」
やはり小笠原の過去の行動である。そうしたことは全て古館から聞き出していたのでそれを何処までも攻めていくのであった。
「そういうことって」
「ライターはあれだよ。煙草とかに火を点けるものだ」
「人に点けるものじゃ
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