第百四話 最後の戦いの前にその十五
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「俺はあんなことはしない」
「絶対にだね」
「俺は俺の必要なものだけ手に入れる」
「トレーニングもだね」
「その為にしている」
あくまで、というのだ。
「それだけだ」
「成程ね」
「スピード、柔らかさも必要だ」
身体のそれもだというのだ。
「無駄な硬い筋肉なぞな」
「あんたにとってはだね」
「害でしかない」
「言うねえ、まあ自然に鍛えた素早い筋肉がだね」
「一番強い」
「だろうね、俺もね」
ここでだ。親父は自嘲めかしてこんなことも言った。
「若い頃は陸上部でね」
「走ってだな」
「そう、バネみたいだったんだよ」
加藤に笑って話す。
「昔はね」
「学生時代はか」
「大学まではね」
「そうだったのか、親父さんも」
「それが今ではね」
苦笑いではなかった、包容力のある受け入れている笑顔での言葉だった。その言葉を出しながら自分の腹を叩いて言う、結構太いそれを。
「この有様だよ」
「太ったっていうんだな」
「女房にも言われてるよ、これ以上太ったら」
巷の中年がよく言っている言葉をだ、親父も出した。
「よくないってな」
「太ってか」
「それで」
「そう、それでだよ」
まさにというのだ。
「飲むのも食うのも抑えろってな」
「節制しなければ健康を害する」
「よくないよな」
全く以て、と言うのだった。
「太り過ぎは」
「そこまではいかないと思うが」
「いやいや、ビールの飲み過ぎでさ」
それでだというのだ。
「痛風がね」
「それとだな」
「コレステロールの多いな」
「肉の中でもか」
「それに注意しろって言われてるんだよ」
自分の妻からだ、そう言われているというのだ。
「何かとな」
「それは大変だな」
「あんた結婚は」
「まだだ」
加藤は実にあっさりと親父に答えた。
「それはな」
「そうか、気楽なんだね」
「気楽といえば気楽だな」
「そうだね、独身貴族はそれでな」
「するつもりはあるがな」
相手は見つけてはいないがだ。
「今のところは一人だ」
「そうだね、それで俺も女房に言われてるんだよ」
結婚したその結果、というのだ。
「酒と食いものには注意しろってな」
「実際に注意しないとな」
「身体によくない、それにだ」
加藤はその焼酎を飲みつつ述べた。
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