第百四話 最後の戦いの前にその十二
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加藤は闘っていた、この日もストリートファイトだった。その試合の後で報酬を受け取ってからであった。彼はその報酬を渡してくれた男に言った。
「今日も楽しんだ」
「そうか、それは何よりだな」
「ああ、じゃあな」
「また来るよな」
「飽きるまでな」
これが彼の返答だった。
「そうさせてもらう」
「そうかよ」
「ああ、飽きたら闘わないが」
それでもだというのだ。
「俺はまだ飽きていない」
「それなら闘うのか」
「そうだ、俺は闘う」
そうすると言ってだ、そのうえでだった。
彼はその場を後にした、そうして。
一人のまま街に出てだ、居酒屋に入ってだ。
カウンターに座って焼き鳥と焼酎を頼んだ。それから焼き鳥を食べてその焼酎を飲んでからだ、店の親父にこう言った。
「レバーも貰う」
「あいよ、焼酎は」
「もう一杯」
それもだというのだ。
「貰うな」
「わかったよ」
「焼き鳥はいいな」
「あんたそれ好きだね」
親父は彼にこう言った。
「最近よく来るけれど」
「酒は元々嫌いじゃない」
飲みつつの言葉だ。
「それに焼き鳥もな」
「それもか」
「皮も後で貰いたい」
「わかったよ、そっちもだね」
「皮は塩だ」
それで焼いてくれというのだ。
「皮はあれがいい」
「こだわりだね」
「そうなるか」
「ちょっとしたね、それに焼酎も」
「それもか」
「あんたビールは頼まないね」
親父は彼にこのことを言ったのである。見れば和風の店には客がそれなりにいる。その中にいて話をしているのだ。
「それは」
「ビールはな」
「嫌いかい?」
「あれは痛風になるからな」
だからだというのだ。
「飲まない」
「ああ、身体に気をつけてるんだね」
「酒は好きでよく飲むがな」
「ビールはだね」
「それに日本酒もな」
それもだというのだ。
「飲まない」
「そっちは糖尿病だな」
「それの危険があるからな」
「糖尿病ねえ、あれも怖いからね」
「だから日本酒も飲まない」
そうしているというのだ。
「俺は飲む量が多いからな」
「そうそう、あんたいつも結構飲んでるよ」
「だからな」
それでだというのだ。
「日本酒も飲まない。さもないと」
「さもないと?」
「満足に楽しめなくなる」
だからだというのだ。
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