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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十七話 国際協力都市
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らとしても国債を発行したのは事実である以上償還しないとは言えません。となればヴァレンシュタインの言うようにどれだけ有利な条件で償還するか、という事になります。そして同盟からの条件は財務尚書が申し上げましたが帝国にとって非常に有利です。彼らにとっては帝国が金を払ったという事実が大事なのだと思います。目減りなどどうでも良い事でしょうな」
溜息が出た。“強かですね”と言うと皆が頷く。
同盟からの提案を受け入れるべきだろう。だが誰も口に出せずにいる。十二兆帝国マルク、大き過ぎる金額だ。そして他でもない同盟に払うという事、帝国臣民の感情、それらが皆の口を重くしている。
「……已むを得ませんね。同盟からの提案を受け入れましょう」
「しかし……」
「これは皇帝としての決断です」
皆が私を見た。非難する視線ではない。謝罪が半分、安堵が半分だろうか。
「……すまぬな、お前に辛い決断をさせてしまった」
夫が頭を下げた、他の三人もそれに倣う。
「そんな事は有りません。皆が苦労しているのです。私もそれを分かち合おうと思っただけです。頭を上げてください」
決断して良かったと思った。皇帝になった以上、飾りであってはならない。エリザベートを見た、目を丸くしている。いずれはこの娘も皇帝になるだろう、飾りにしてはならない……。
夫が大きく息を吐いた。
「ならばもう少し粘ってみるか。十二兆はいささかきつい、なんとか一桁、九兆か八兆に出来ぬかとな。周囲に与える印象は随分と違うはずだ」
「なるほど、同盟が金額ではなく帝国が国債を償還したという事実に重きを置くのであれば可能かもしれませんな」
「八兆まで減額出来れば、目減り分を入れれば実質償還するのは約半分と皆に言えましょう。交渉に勝ったとは言えなくても負けてはいないと言えます」
夫の言葉にレムシャイド、ゲルラッハが続いた。シュタインホフが“戦争と同じですな、勝ってなくても負けていないと抗弁する。良くやったものです”と言って嘆息した。皆が笑い出した、シュタインホフも笑った。大丈夫だ、私達は未だ笑う事が出来るのだから。
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