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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十七話 国際協力都市
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の材料が無い。八方塞に近かった。
「財務尚書は如何思うのです?」
私が問い掛けるとゲルラッハ子爵は“はっ”と畏まった。もっとも表情は苦しげだ。言葉を選ぶような口調で話し始めた。
「同盟からの申し出は償還の条件としては極めて帝国に有利としか言いようが有りません。今の一千億帝国マルクと百二十年後の一千億帝国マルクはまるで価値が違うはずです、目減りしているでしょう。もし、臣が国債の保有者ならそのような条件は到底認めません」
「償還を断ればどうなります。元々同盟の物ではない、強奪に近い形で奪った物、不当に取得した以上償還の義務は無いと言っては」
結局のところ帝国が償還を渋るのは同盟に対する反発と国債を得た手段が強奪と言って良い程に不当だった所為だ。何故償還しなければならないのか、帝国に返還するべきではないか、そういう感情が皆に有る。帝国人二百四十億の殆どが濃淡は有れ同じ思いを持っている筈だ。ゲルラッハが有利と言いながらも同盟からの提案を受け入れるべきだと言わないのもそこに理由が有る。
「その場合は元の持ち主に返却するとのことです」
「元の持ち主? フェザーンですか?」
私が問い掛けるとゲルラッハが頷いた。
「はい、そうなると償還条件はかなり厳しくなるでしょう。現状でも償還期限を過ぎている国債が三千億帝国マルク程有ります。フェザーンは直ぐに償還を求める筈です。帝国は十二兆帝国マルクをきっちりとフェザーンに償還する事になります。あまり喜ばしい状況では有りません」
夫が顔を顰めた。フェザーンは例の貴族連合軍の一件で帝国を酷く恨んでいる。十分に有り得る。
「借りた以上返すのは当たり前、であれば有利な条件で返すのが賢明だと言われました」
ゲルラッハが太い息を吐いた。面白くなさそうな顔をしている。シュタインホフが“他にもございます”と後を続けた。
「門閥貴族が没落した事によって帝国の財政は一気に改善した。政府の力も強まり改革も支障なく進む筈。自らの手を汚す事無く代償も支払わぬのはいささか虫が良過ぎはせぬかと……」
皆が渋い表情をしている。私も顔を顰めてしまった。相手の言う事は事実だ。こちらの状況を見透かされている。何ともやり辛い。聞いていてもやり辛いと思うのだ、実際に交渉をした夫達の苦労はどれほどだったか……。溜息が出そうになった。
「同盟はこの件では譲りますまい。現状では同盟が有利に戦争を進めています。何らかの形で戦争に勝ったという事を市民に証明しなければ暴動が起きるでしょう。とてもではありませんが和平など結べません」
「それで国債の償還が必要だというのですか? レムシャイド伯」
レムシャイド伯が頷いた。
「帝国には借りたものを返すだけと要求し、同盟市民には賠償金のようなものと説明出来ます。極めて都合が良い。こち
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