二十一話 確認
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
二度目の影時間を俺達は迎えた。
「っ!!」
思わず息を飲む。
世界が緑になった瞬間に眩暈を覚え、人の気配がしなくなったと同時に吐き気がしだす。
昨日の恐怖が再び沸いてくる。
足が震えそうになる。
念のために買った、ポケットに入っている果物ナイフを握り締める。
横で先輩がより強く俺の腕にしがみつく。
自分がしっかりしなければいけない。
「・・・やっぱり今日もか」
先輩に影時間が毎日来るであろうと思わせるために呟く。
実際にそうなのだがそれを直接言うわけにはいかない。
「先輩はここにいてください」
「え!?」
もしシャドウがいた場合、先輩は足手まといにしかならない。
実際に戦闘する気はない。
というより、戦闘する勇気なんて元々持ち合わせていない。
こんな非日常で頑張れるほど、俺は強くない。
(ていうか、これがスタンダートなんだよ)
自分にそう言い聞かせる。
原作の主人公は普通に戦っていた。
もちろん伊織もそうだったし、岳羽さんも最初は戸惑っていたがすぐに戦えるようになった。
しかし、自分はどうだろうか。
たぶんよほどのことがない限り戦えないだろう。
俺にはそんな勇気も覚悟もない。
「大丈夫です。昨日みたいに戦う気はありません」
では何故、自分をここに置いて行こうとするのか、先輩の目はそう言っていた。
「確かめたいことがあるんです」
そうだ。
確かめなければいけない。
今後の安全のためにも。
これで最後。
寮から出なければ安全、ということさえ確認できればそれでいい。
これで最後。
自分に何度も言い聞かせる。
(これで最後。もう二度とシャドウには会わない。だから、今だけ、今だけは・・・)
動いてくれ、俺の足。
そう念じながら、俺はゆっくりとしがみついている先輩を離す。
「あ・・・」
離された先輩が泣きそうな声を上げる。
「大丈夫です。大丈夫ですから」
そう言っても先輩は離された後に掴んだ、俺の服の裾を離さない。
「大丈夫です。何があっても先輩は守りますから」
先輩の目を見て言う。
すると、ゆっくりと先輩の手から力が抜けていく。
そして最後には俺の裾から手を離す。
「すぐ戻ってきます」
俺は先輩にそう言って、自分の足が恐怖で竦んでしまう前に歩き出す。
先輩の寮は、正面から見ると右側は建物に隣接しているが、左側には向こう側へと繋がる道がある。
上から見れば、カタカナのエの形に道路がなっている。
エの真ん中の縦線の右に先輩の寮がある、上下の横線は
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ