SAO編
第二章 曇天の霹靂
5.積み重ねた自信
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る。
対処。
――上昇をさせない。前段階で阻止する。
上昇するには両翼での力強い羽ばたきが必要。
よって、片翼に攻撃を加えて羽ばたきを阻止。
片翼だけの羽ばたきは相手の体勢を崩すことになるだろう。
それは連撃を加える好機となる。
「セッ――」
槍の刺突でハルピュイアの右翼、その根元を穿つ。
既に翼の振り下ろしを始めていた女面の怪鳥は、その衝撃で右翼の動きが止まり左翼だけが強く振り下ろされる結果となった。
体の片側だけに発生した推進力にバランスを崩した敵は傾きながら落下しようとする。
「フッ! ……ヤッ! ……ハァッ!!」
その隙だらけの体に槍での連続攻撃を行った。
ソードスキルではないため威力は無いが、手数によって見る見るうちにハルピュイアのHPバーが削れていく。
――だいたい想像通りに戦闘がこなせるようになってきたな……。
現実とは違うこのゲームの世界で、最初は色々と戸惑うこともあったが、それも努力を積み重ねることで徐々に対応出来てきたと思う。
俺は強くなっている。
それを今、実感している。
いや、俺だけじゃない。ルネリー、レイア、チマも。
三人とも着実に力を上げてきている。
同レベル帯のモンスターに苦戦することは無くなったし、不意に貰う状態異常やフィールド上の罠などの対処も格段に上達した。
このまま進めば、全員無事でSAOをクリアすることも現実的な展望となってきている、と俺は考え始めていた。
「……ふぅ」
担当していたハルピュイアを倒し、周囲を確認。
目視、索敵スキルに反応無し。一帯のモンスターは全て狩り終えたようだ。
少しだけ気を緩めて息を吐く。
此処は敵の湧出が早いために、敵が居ないからといって油断は出来ない。
システムウインドウを開いて時刻を見る。
赤みがかった周囲に予想はついていたが、既に十七時を越えていた。
「……そろそろ今日は切り上げようか」
ログハウスまで三十分は掛らないが、危険度の増す暗い夜道を歩くこともないだろう。
「あ、はーい!」
「わかりました」
「うぃッスー。レベルもひとつ上がったッスしね!」
俺の提案に元気よく頷く三人。
次のポップが始まる前に、俺たちはその場を後にした。
時刻は夜の十八時。
無事ログハウスに戻ってきた俺たちは、広い居間にて各自思い思いの時を過ごしていた。
ドロップ、消耗品アイテムの整理、砥石や専用油での武器防具の手入れ、そして談笑。
SAOでの俺たち日常風景。
殺伐としたこの世界で、精神を平静に保つためのある種の儀式。
俺たちはこの時間を大切にしていた。
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