第一部
第一章
虚実から現実へ
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可能性を感じていた。
「……恭夜くん。」
「ん?」
一仕事が終わり、逆さにした配給の木箱の上に座る俺の隣に美羽も同じように腰を下ろした。そのまましばらくお互いにねぎらうわけでもなく、言葉を投げかけるわけでもなく、無言の時が慈悲もなく流れる。耳に届く広場の談笑。子供たちの笑い声。そんなこの世界でのイレギュラーな光景と音が、耳に心地よい。
「楽しそうだね。みんな。」
ふと、子どもたちの喧騒に乗って聞こえてくる美羽のつぶやきも、意識していなければ聞き逃してしまいそうなくらいの声。その美羽の柔らかな微笑みは、広場のみんなに向けられていた。
俺も広場のみんなを見据える。荒れ果てた広場の一角で他の男の子たちと一緒になって走り回るミレア。男の子二人。カルアとフリードも三人して楽しそうに駆け回っている。心の底から愉しそうに遊ぶ三人の姿が俺の視線を捉えて離さない。
「……そうだな。」
なんの他意もなかった。子供たちから目は逸らさずに、俺は自然と肯定していた。
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