第一部
第一章
虚実から現実へ
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殴っていたらしい。お怒り模様。そしてものすっげぇ痛い。
「……確かに、その幼女とは思えない無限のパワーにh」
ゴッ!
「うるさい。」
「……」
今度は突き刺さるような鋭利な痛みだった。言葉に出ないほど。
ちょっとした冗談のつもりだったんだけどな……。それに、どこをどうすればそんな鋭利な痛みを人に与えることができるのか、俺には永遠に解き明かせない不可解な謎だ。
「ほら、早く手を動かす!」
「……はい。」
俺は痛む頭を抑えつつ、箱のなかに詰まっていた食料を脇にある台の上に並べていくほかにはなかった。
……ま、今回ばかりは俺のせいではあるんだけどな。
とりあえず目の前に置いた箱から取り出して横に並べていく品物のほとんどが果物や野菜、後は比較的新鮮な水の入ったボトル。そいつらを箱に入っている順に上から取り出していく。一つの箱が空いたら次の箱。それも空いてしまえば、また次の箱と6つ全部の箱が開け終えるまで、俺達の手は休まらない。
「おお、今日もたくさんあるな。」
「ね。いいことだよ。」
「まぁな。」
お互いが話している間だって手が止むことはない。着々と空の箱は増え、やがて6つ全部の箱から食料と飲料を取り出し、脇の台の上に開け終えるまでが大体10分くらいか。広場のみんなの輝いたたくさんの瞳が注がれる、食料や飲料が一杯に積み上げられている大きな台と、俺達の後ろに積み上げられた空の箱が6つ。
ん、こんなもんか。
ようやくすべての準備が終わった今、俺たちは頷き合い、みんなの方を見据えた。みんなもじっと期待に胸を膨らませたような、生気に満ち溢れた目を俺たちに向けている。そしてその前で美羽は、列の形成するみんなに向かって高らかに言葉を投げた。
「じゃあみんな!順番に1つずつ、ここにある在庫がなくなるまで取って行っていいよ!」
そんな気前のいい言葉。そう叫んだ瞬間、列に並んでいたみんなはワッと湧いた。
列の一番先頭に並んでいた一人が早くも配給台の前に走り寄って来る。
「じゃあ俺はまずは……こいつだ!」
一人目の男の人が取ったのは、少し虫食い穴が目立つがとても美味しそうなリンゴ。この配給での人気の品物だ。
「僕はこれ!これにする!」
二人目の男の子が迷わず手に掴んだみかん。彼もよくここの配給に顔を出すが、決まっていつもみかんを始めに持ち帰っていた。
そのまま順々と順番はめぐり、一巡。二巡。三巡と、一人が幾つかの品を手にしたあたりで俺達の配給の在庫が尽きた。今日は50人以上が集まっただろうか。集まった人たちの手や持ち寄りの布切れにはたくさんの食料が包まれ、彼らの顔にも満面の笑みが灯っていた。配給が終わった後も広場で各々談笑を繰り広げる老若男女の様子は、それはこの荒廃した世界に僅かながらに灯る希望の光のようで。俺は唯一ここだけにこの世界の
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