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Eve
第一部
第一章
虚実から現実へ
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とって俺らは蚊帳の外の蚊も同然。蚊帳の外にでさえしなければ噛み付かれないし、俺達も何をすることもできない。
そうだ、だから今は落ち着くんだ……。
やがて、20階ほど下ったあたり、ようやく地上階にたどり着いた俺の目の前。しかしそこにもまだ、生ける屍の廊下は続いていた。
「……」
「イ……イタイ……」
「……ガッ……」
俺がみなの横を通ろうとするときに聞こえる、断末魔のような声。今にも死の世界へと引き込まれんとする者たちの、生ける屍たちの現世への執着心が奏でる死の音色。決して目は合わせない。決して気にかけてもいけない。気にかけたらきりがない。ここまできてしまっては、俺にはどうすることだってできやしない……。
俺は必死に計り知れぬ無力感と悲しみにあらぶる心を抑えつつ、生ける屍たちを避けつつ避けつつ外へと向かう。
早く。ここを曲がれば外界。とっととこの光景から目を背けたい。早く、世界の中心となる街。そう詠われる、人類最後の砦に。
解放されっぱなしで辺りにバラバラに散らばっている木枠のドアの破片。躊躇もなく破片を踏みつけ、俺は外界との隔たりを跨いだ。
「……」
サァッと、季節すらもよくわからなくなってしまった世界の生ぬるく湿った、腐臭を孕んだ風が俺の頬を撫でていった。建物の中にいたときのような身近に感じる腐臭はなくなったが、でも今はそれよりも凄惨な光景と、もっと胸を突くような死臭を孕む風が俺の三感に触れた。
……人生に絶望していない。この権力支配には絶望していても、生きる意味と気力、希望を保ち続けている俺のような人間には……この光景はいつものことながら、素通りすることなど到底できそうにもない。早く過ぎ去りたい気持ちと、俺のいつもの仕事から目を逸らすことができないというジレンマに悶つつも、必死の思いで歩を進める。
目の前の大通り。街の中央から放射状に幾本も伸びる大きな通りのうちの一つ『第一大通り』。俺たち下等民が勝手にそう呼んでいるだけの道に転がるのは、その下等民たちの屍。無数に、見るも無残な様相で。まだ小さな赤ん坊も。ひ弱な女子供も。補足痩せこけた男もみな。
飢餓で死んだ者。同じ賊民から襲われ、身ぐるみを剥がれ、慰み者として最期の最期まで弄ばれた末に、その全てを掻っ攫られた女子供。必死の思いで手に入れた僅かばかりの食料を奪われ、挙句の果てに集団で暴行され、長く悲痛な苦しみに満ちた人生を最悪な形で閉幕した老人。彼らの表情見るだけでわかってしまう。
さらに歩みを進める先から途切れもなく、通りを埋め尽くすほどに転がる屍。死後数ヶ月が経つ屍でも、たった今息を引き取った屍だって、誰からも供養の念を受けることもなくただ孤独に死に絶え、これから先も孤独に、ただそこにあるだけの遺骸。
腹部の無数の穴からは赤黒い臓物をまき散らし、体に纏ったボロボロの布切
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