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闘ひとは
第四章

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第四章

「僕はそんな連中が嫌いなんだよ、それで」
「そうした人達とですか」
「ああ、闘ってるんだ」
 それが彼の言う闘いなのだった。その闘いだ。
「こうしてあえて飲んでそれで」
「書いてですか」
「長く生きられなくても」
 彼はまた言う。
「それでもね。闘うよ」
「命ある限りですね」
「あんな連中には負けないよ」
 酒を飲みながらさらに続けていく。
「絶対にね」
「わかりました。それじゃあ」
 バーテンは彼の言葉をここまで聞いてだ。そのうえであるものを差し出した。それは。
「これは」
「どうぞ」
 微笑んでの言葉だった。差し出したものはチョコレートだった。この時代ではウイスキーよりも貴重なものになっている。それを差し出してきたのである。
「これを」
「くれるのかい」
「はい、食べて下さい」
 微笑んでの言葉だった。
「先生が闘われるなら」
「これを食べてくれっていうのかい」
「ええ、闘って下さい」
「有り難う」
 彼はそのチョコレートを受け取った。そして早速その銀紙を外して。そのうえで口の中に入れる。それから言った言葉というと。
「アメリカ軍のやつだよね」
「そっから貰ってきたものです」
「ギブミーチョコレートか」
「それでもいいですよね」
「いいよ」
 その英語の紙で包まれているチョコレートを食べながらの言葉である。
「アメリカ軍を食べてるからね」
「ははは、そうなりますね」
「アメリカ軍には一度だけ負けたよ。けれど」
「それでもですね」
「僕は闘うよ。その偽善者達とね」
 彼の今度の敵はそれなのだった。偽善者達とである。
「どうなってもね」
「応援してますよ」
 バーテンはチョコレートを食べながらウイスキーを飲んでいく彼に告げた。
「それならね」
「はい、それじゃあ」
 彼は飲みながら闘うことを誓っていた。彼の闘いをである。それを決意して飲むのだった。終戦直後の一幕である。


闘ひとは   完


              2009・12・15

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