第百六十五話 両雄の会同その十三
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「頼むぞ」
「はい、それでは」
「茶の場においても」
「お任せ下さい、それでは」
こう話してだ、そしてだった。
茶のことも決まった、そして本願寺側に内密にこのことが伝えられた。すると顕如は一旦目を閉じ開いてから織田家からの使者である荒木に答えたのだった。
「わかり申した、それでは」
「受けて下さいますか」
「喜んで」
これが顕如の返事だった。
「お受け到そう」
「では都のある場所で」
「右大臣殿と共に茶を」
「ではその場は」
ここでだ、荒木は顕如にその茶室の場を伝えた。顕如は茶を淹れるのが利休と聞いてあらためて言った。
「それは何より」
「そうですか」
「天下の茶人である顕如殿ならば」
彼がだ、茶を淹れてくれるのならというのだ。
「喜んでお受け到そう」
「ではお約束の時に」
「あいわかった」
顕如も頷いて答える、そしてだった。
顕如は信長と茶を飲むことを約束した、荒木はその言葉を受けて退いた。そして荒木が退いてからだった。
その時にだ、本願寺の高僧達は顕如に口々に言うのだった。
「法主様、織田信長と話すことは」
「共に茶を飲むことは」
「どうかと思いますが、流石に」
「誘き寄せてじゃな」
顕如も言う、だがだった。
そのことはだ、彼はこう高僧達に言った。
「織田信長がそうすることをしないことはわかったであろう」
「確かに、それでは」
「今は」
「うむ、ここに留まってな」
そうしてだというのだ。
「待っていてもらおう」
「わかりました、それでは」
「今は」
「うむ、ただ茶室の外は念の為に守ってもらう」
このことは流石に忘れなかった、それでだった。
顕如は雑賀に顔を向けてだ、そのうえで彼にこう言った。
「頼むぞ」
「わかりました、それでは」
「うむ、それではな」
「御主が守ってくれれば安全じゃ」
「では茶室の外にいながらも」
それでもだというのだ。
「頼むぞ」
「はい、それでは」
「御主ならばじゃ」
絶対にだというのだ。
「ここもな」
「法主様にはどの者も指一本触れさせませぬ」
こう約束するのだった、雑賀も。
「どの者でも」
「そうじゃな、御主はな」
「では茶室に」
「うむ、行こうぞ」
こう話してだった、本願寺の方も決めたのだった。
こうして信長と顕如は茶室で今度はまさに顔を見合わせて話をすることになった、両雄は武ではなく茶の場で対するのだった。
第百六十五話 完
2013・12・29
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