第百六十五話 両雄の会同その十二
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「よいな、小さいものでよいからな」
「招かれるのは」
「あの御仁よ」
信長は不敵な笑みで答えた。
「あの御仁しかおらぬわ」
「では」
「やはり」
「うむ、顕如殿じゃ」
彼をだ、呼ぶというのだ。
「そうする。そして茶を淹れるのはな」
「それがしですな」
利休が出て来た、彼も織田家の家臣として都に招かれているのだ。今回の戦には加わってはいないがだ。
「それでは」
「そうじゃ、頼めるか」
「はい」
利休は信長に静かな声で答えた。
「それではです」
「そうさせてもらいますか」
「そうじゃ」
まさにだ、そうするというのだ。
「本願寺光佐だけの者に茶を淹れるとなればな」
「それがしですか」
「茶と言えば御主じゃ」
まず、というのだ。
「十二郎や左介ですらな」
「はい、それがしもそう思います」
「それがしもです」
その荒木と古田も答える、自分達ではというのだ。
「顕如殿に茶を淹れるとなりますと」
「役不足です」
「無論それがしも」
細川もだった、こう言うのだった。
「あれだけの御仁になりますと」
「だからですか」
「天下の茶人である御主だからじゃ」
顕如との茶を頼むというのだ。
「茶の道を開き歩む御主ならばな」
「ではですな」
「そうじゃ」
それ故にというのだ。
「わかったな」
「畏まりました。それでは」
「さしになる」
信長はこうも言った。
「わしとあの御仁のな」
「では身の回りは」
このことについてだ、毛利と服部が言ってきた。ここでも信長の身を守る為に出て来たのである。
「我等は」
「茶室の中ではなく」
「外で頼む」
茶室の外、そこでだというのだ。
「やはりそれは忘れてはならぬ」
「はい、畏まりました」
「それでは」
「おそらく向こうも備えておる」
身の回りのことはというのだ。
「雑賀孫市がおるからのう」
「あの者がですか」
「腕利きの忍である」
「あの者の力ですが」
滝川が目を鋭くさせて言ってきた。
「それがしや服部殿、そして北条家の風魔小太郎に匹敵するまでです」
「相当な手練じゃな」
「真田もそうと思われますが」
真田幸村だ、十勇士を率いる彼は今では二十四将と並ぶ武田家を支える者となっているのだ。
「そうした天下に名を轟かせる」
「忍じゃな」
「顕如殿の守りもです」
「確かじゃな」
「左様です、ですから」
「それ故にじゃ」
毛利と服部を見てそのうえでの言葉だった。
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