13:カウントダウン
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キミは、最前線の攻略組の中でもトップクラスの剣士……ボクよりレベルは最低でも10は上だろうね。でも、それだけ分かれば充分。――そして教えてあげる」
ユミルはウィンドウを手早く操作した後、あくまでもゆったりと武器を中段に構え、キラリと斧の白刃が鋭く反射した。
「――レベルだけじゃ、勝利はもぎ取れない……ってね」
そして、俺の眼前にデュエル申請のシステムメッセージが出現する。
……………。
俺は僅かな間、完全な沈黙でそのウィンドウとユミルの顔を交互に見やっていた。
呆気にとられていたわけではない。
……俺は必死に湧き上がる笑みを噛み殺していた。
それは可笑しさではなく、失笑でもなければ嘲笑でもない。
――これは純粋に、ユミルという戦士に対する賛辞の笑みだ。
相手が自分よりも数値上では数段優位に立っている事を知りながら、微塵も恐れず挑もうとしているその姿。コミュニティ能力に欠ける俺だからこそかも知れないが……こんな好漢な戦士に出会えたのは久しぶりだ。……いや、好漢ではなく好女、だろうか。
ここで俺は「その意気や良し」だの「ああ、その通りだ。お前のそういうところ、嫌いじゃないぜ」だの……気の効いた返事を返したいところではあったが、相手がいじけた表情で返事を返すことが目に見えていたので、ここは口にしたい賞賛の意をぐっと飲み込んで、現れたメッセージのオプションを設定する。
最後に申請の承諾ボタンを押し、カウントが始まる。
俺の視界がオートフォーカスされ、自動的にユミルの頭上に一本のHPバーが表示される。
……彼女の真似ではないが、俺も緩めた動作で剣を鞘からシャリンと抜き、下段に構えた。
「《初撃決着モード》、か。……ボクは全損決着でも良かったんだけど」
「冗談」
軽く交わした他愛ないこのやり取りを最後に、俺達二人の目と意識はスッと研ぎ澄まされていく。
周囲の余計なノイズをもシャットアウトし、臨戦態勢へとフェードインする。
全ては勝つ為に。
……いや、さらに言うなら。
ユミルの力を見る為に。
そして俺も、ユミルにレベルの力ではない勝利を見せ付ける為に。
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