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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第91話 夜の翼
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サを抱き留め、上空の炎を視界に納めながら滑り行く俺。
 その俺の上。先ほどまで自らの頭が存在して居た空間を何かが瞬時に過ぎ行き――

 次の刹那――森の木々がその梢を震わせ、次々と倒れ始めた。その倒木……俺の胴体よりも太い幹回りを持つ、何れも巨木と言っても良い倒木たちは、すべて俺の首辺りの高さで滑らかな分離面を俺の方に晒していた。
 そう。まるで途方もない切れ味を誇る鋭利な刃物……俺の扱うクラウ・ソラス(勝利もたらす光輝)並みの刃物で瞬時に斬り裂かれたかのように。

 確かに、今の俺、そしてタバサにも一度だけ魔法と物理攻撃を反射する術が施されて居ます。しかし、それは貴重な一回。簡単に浪費して良い物では有りません。
 この術を消費する時は、詰めの一手を放つ際に消費すべき術式。それ以前は自らの能力を駆使して、すべての攻撃を回避する必要が有ります。
 所詮、戦いとは騙し合い。切り札は最後まで取って置く。切り札を場に晒す事なく勝利出来るのなら、それに越した事は有りませんから。

 現状は、先ほどアルマンとの間で行われた一騎打ちとは別次元の戦い。四肢の自由を、術の行使を完全に封じたはずのアルマンに何が起きたのかは判りませんが、それでもこうやって縛めを、そして術を解いて再び立ち向かって来たのです。尋常ならざる事態が進行中と言う事なのでしょう。

「我、世の理を知りて陣を画く!」

 タバサを抱え滑ること数メートル。大木に足を掛け停止した瞬間、左腕にタバサを抱えたまま起き上がって、同時にシルフを起動。再び右に――森の入り口に存在する別の巨木の影へと跳ぶ(瞬間移動)
 その瞬間に構築される防御用の結界。但し、これは相手の攻撃方法が判らないので、攻撃に対する防御用の陣を構築しただけ。故に、防御能力は低く、簡単に無力化される可能性も有る信用度の低い陣。
 ほぼ気休め程度の陣の構築。一瞬、元アルマンの視界や探知能力から消える程度の瞬間移動。もっとも、こんな物でどうにか出来る相手なら、あのアルマン自身を封じていた縛めは破れないはず。

 ならば!

「我、世の理を知り、虚ろに隠れる」

 続けざまに発動させる仙術。空間に歪みを発生させ、其処に潜む事によって敵の視界から一時的に完全に隠れる仙術。但し、この術の難点は、こちらからの攻撃は一切不可能と成って仕舞う点。まして、大きな動きや有る一定以上の声、物音などでも簡単に術の効力が失われて仕舞うと言う事。
 もっとも、現状は意識を失ったタバサを正気に戻すだけですから、問題はないでしょう。

 刹那、まるで熟練の木こりが木を伐り倒しているかのような音が鳴り響き、同時にタバサを抱える左腕に微かな痛み。大樹を背に繁みに隠れ、顧みた方向に立つ白い彫像。俺たちと、元アルマンが変化した魔物との間
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