第5章 契約
第91話 夜の翼
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し続ける五山の送り火の明かり。
大丈夫。周囲の気配も未だ陽の気が支配する世界。少なくとも、陰気に支配されたモノ達が騒ぐ夜では有りません。
どうやら、今回の事件はこれで終了。後は穢された泉に元の清浄な水を戻し、聖域を清めて、復活させられようとした邪神をもう一度、ちゃんとした封印を行えば良いだけ。
そう考えながら、タバサの元に歩みよろうとした正にその時。
みちり、……と言う何かが軋むような音が聞こえて来る。
そして同時に、くぐもった笑い声が響いた。
いや、それを笑い声と呼ぶ訳には行かない。四肢を。そして、口を完全に封じられ、声さえまともに発する事が出来ない男に残された最後の行為。咽喉を鳴らすような、おそらく笑って居るのだろうと言う空気が震える音。
そして、その音に重なる、みしみしと言う何かが軋むような音。
足元。振り返った先……ほんの三歩の距離に横たわる男から発せられているはずのその笑い声は、何故か遙か彼方。遠い海の底から聞こえて来るような、昏く、そして冷たい気配を発し、その異質な気配が陽の気に支配された周囲の雰囲気を一気に浸食して行く。
そう、危険な邪神が発する此の世ならざる気配が……。
次の瞬間、生木が弾けるような音が。
更に、今まで一度も聞いた事のない……いや、召喚された日に一度だけ、レンのクモに俺が倒された、と見えた瞬間にだけ聞いた事の有る少女の悲鳴が響き――
マズイ!
背後から叩き付けられるような鬼気は無視。アルマンの元で何が起きて居るのか判りません。しかし、今は――――
膝から崩れ落ちる蒼い少女。彼女までの距離は五歩。
一歩目。瞬間的に戦闘態勢に入ったマルコシアスから放たれる業火。伝承に残るマルコシアスの蒼白き炎が進む毎に大気をイオン化。空気自体が爆ぜるような音を立て、数多の雷となって周囲に降り注ぐ。
二歩目。自らの懐に手を入れる。同時にウヴァルより放たれる光の矢。元は能天使パワーの放つ光の矢は善と悪。すべての存在を糾弾する力を持つ。
三歩目。印を結ぶ。そして、その瞬間にレヴァナにより構築される不可視の陣。アダムの最初の妻リリスの妹にして正統なる古き月の女神。彼女はすべての魔女の源流にも当たる存在。
四歩目。自らの息を吹きかけ、ばら撒かれる剪紙鬼兵衛符。
後一歩。そう考えた瞬間。突如、背筋に走る悪寒。その距離が今は果てしなく遠く感じる。その瞬間に聞こえて来る獣の遠吠えにも似た哀しげな……しかし、非常に不快な響き。
このまま進むか。それとも――
「ええい!」
自らの直感を信じ、タバサに向け飛び込む俺。
蹲るタバサを左腕で抱き寄せ、右肩から受け身を取るように接地。半回転した後に胸にタバ
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