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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第91話 夜の翼
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 その敵対者にあっさりキャインと言わされる神に選ばれた英雄って……。

「木行を以て捕縄と為せ」

 何にしても、このまま茫洋として時を過ぎさせる訳には行きませんか。そう考え、素早く導印を結び、口訣を唱える俺。その次の瞬間、

「な、キサマ! これはっ――――」

 かなり驚いた、更に怒気を含んだアルマンの声。しかし、その声も直ぐに沈黙させられて仕舞う。
 そう。軍杖は取り落とし、大地に両手両膝を着いた状態で動こうとしなかったアルマンの身体を、大地から伸びて来た蔓が完全に拘束して仕舞ったのだ。それも、舌を噛み切って自決されないように、口腔内にまで蔓を侵入させるような形にして。

「悪いな、アルマンさんよ。剣を交えた相手に敬意を表したいのは山々なんやけど、アンタらは、他人の生命どころか自分の生命さえ簡単に邪神の贄にして仕舞うような御方やから、少しばかり手荒な方法で拘束させて貰った」

 状態としては、自分の召喚した鎖に雁字搦め(がんじがらめ)に縛り上げられたジュール・セザールと名乗った悪霊と同じ状態。いや、口すらも封じた以上、あの時よりも更に拘束度は上がっていると思いますね。身体中を蔓に覆われて大地に無様に転がされている様は、ギャグ漫画の登場人物、もしくはミノムシ。
 上空に輝く炎の五芒星の明かりに照らされたその姿は、……何と言うか、少し倒錯した趣味の人間のようで非常に嫌なのですが、この場合は背に腹は代えられませんから。

 そして、一歩、そのミノムシ状態のアルマンに近付き、最後の仕上げ。自称英雄ジュール・セザール殿の時と同じように額に術を完全に封じる禁呪の札を貼り付ける俺。これで、自分の魔力のみで発動するコモンマジックの方も封じたので大丈夫。もうヤツは何も出来ないでしょう。
 確かにこれまで……。以前の事は判りませんが、今回のルルド村近辺でこのアルマンが行って来た行為は、正義の名の元に俺が断罪したとしても誰からも非難される事はないでしょう。いや、むしろそれは、ガリア王太子ルイの英雄王伝説に新たな一頁を追加する内容となるはずです。

 しかし……。矢張り、それは違うと思いますから。
 このアルマンを裁くのは俺ではなくガリアの法。まして、ここまで能力に差が有れば無傷で捕らえる事も可能でしたから。
 後は、コイツをリュティスに連れて帰ってから、色々と話して貰うだけです。

 ソルジーヴィオの事。オルレアン大公の事。
 そして……。

 其処まで思考を巡らせてから、ゆっくりと振り返り、この世界にやって来てから出来た家族に少しの笑みを見せる俺。そう。このミノムシからは、彼女の妹の現在の居場所を聞き出す事も可能かも知れませんから。
 その瞬間も響き続ける遠くからの鐘の音。そして、視界の中心に存在する蒼き彼女を照ら
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