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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第91話 夜の翼
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が居れば、いくらでも呼び出せる駒に過ぎない」

 相変わらず自信に満ちた雰囲気でその場に立つのみ。上空の炎が作り出す明かりに照らし出されたその姿は、正に王の如し。
 ただ、更に続けて、

「しかし、ラバン。お前にはひとつ熟して貰いたい仕事が出来たのだが、頼めるかな」

 貴族としての余裕を残しながらも、振り返ったラバンを一瞥した後にそう話し掛けるアルマン。
 しかし、人外のジャガーの戦士八体を瞬殺出来る相手に、今更人間。それもネズミ程度の役にしか立たないと思われるラバンに頼みたい事など……。

「ええ、そりゃあもう旦那の為ならば、どんな仕事だってやって見せまさぁ」

 本心から……とは思えない気配を発しながら、それでも上っ面だけは媚びるような雰囲気でそう答えるラバン。もっとも、これも当然と言えば、当然の答え。
 ヤツは俺やタバサの正体がガリアの王太子とその未来の后……オルレアン家の当主と言う事を知って居るはずですから、この場でアルマンが俺やタバサに敗れると、自らもガリアに対する反逆者として処分される事は判って居るはずです。
 この場でのラバンの選択肢は初めからひとつしかなかったと言う事ですから。

 ラバンの答えに満足気にひとつ首肯くアルマン。
 そして次の瞬間!

「な、ダっ?」

 突如、突き出されたアルマンの右手が自らの胸にめり込むのを、信じられないと言う表情で見つめるラバン。その口から、逆流して来たどす黒い血液が溢れ出して来る。
 そうして……。
 直ぐに引き抜かれた右手を追い掛けるかのように、傷口から吹き出す液体が周囲を赤に染め、妙に鉄臭い臭気を広げて行った。

 ゆっくりと。本当にゆっくりと自らの作り出した血だまりに膝から崩れ落ち、物言わぬ存在へと変わるラバン。
 確かに、今までの被害者たちの何人かも、このラバンと言う男がおびき出していたのでしょうが、それにしても……。

「心配するな、ラバン。貴様程度でも、夜の翼を召喚する多少の役には立つ」

 彼と、そして生け贄となったラバンに相応しい色に染まった右手を頭上へと掲げながら、そう高らかに宣言するアルマン。赤とそれ以外の色にまだら模様に染まったその姿は明らかな狂気。
 そのまま、滴り落ちる液体ごと自らの口元に――

 しかし!

「止めろ、外道」

 上空からの光を反射して放たれる二筋の銀光が、アルマンの右手首と、そして、その手の中に存在する肉塊を貫いた。
 あまりの高速で飛来するその銀光……長さ十五センチほどの釘に因り、アルマンの右手首から上は斬り跳ばされ、その手の中に存在していたこぶし大の肉塊は四散。赤く細かな霧状の何かへと変わって仕舞う。

「確かに、そのラバンが生前に行って居た事が正道を歩んで居たとは言い難いと
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