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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第91話 夜の翼
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「小僧を捕らえろ。但し、生きたまま。生きたまま心臓をえぐり出さなければ、夜の翼が呼び出せない!」



 左右から挟み込むように接近して来た黒い影。黒のマントを広げ迫り来る様は、まるで魔鳥の如し。その瞬間のヤツラの動きは常人に取っては、正に疾風迅雷で有っただろうか。しかし、この場の精霊を完全に支配している俺たちに取っては、幼稚園児の御遊戯に等しい動き。
 右の個体が上体を抑え込むように。左が下半身にタックルを掛けて来るかのように接近して来た黒い影。
 刹那。左手に持つ明かりを点した見せかけだけの魔術師の杖を高く放り上げ、左脚を軸に回転する大振りの回し蹴りにて軽く一蹴。
 小さな精霊を視認できる人間にのみ見る事の出来る淡い光輝(ひかり)。俺の行を指し示す蒼い光輝に包まれた右脚が、酷くゆっくりとした。……まるでスローモーションの映像のような動きで近付いて来る二体の黒いフード付きのマントを捉え――
 蹴り上げられたジャガーの戦士たちが一瞬、赤とも黒とも付かない霧に包まれた後、軽く十メートルは跳ね飛ばされ、泉の向こう側の森に到達。其処で数本の樹木をへし折り、そのまま視界から消えた。
 そう正に瞬殺。相手に俺を殺せない事情が有るのなら、この場で俺がヤツラに負ける理由は存在しなくなる。

 そのまま勢いを付けて一回転。その瞬間に視界に入ったタバサは普段通りのやや人形じみた無機質な表情で、俺の瞳を覗き込んだ後、僅かに首肯く。
 未だ十五……いや、彼女は既に十六歳に成っていましたか。しかし、それでも高が十六歳に過ぎない少女にしては何処か老成した雰囲気。それは、この暗闇の中。更に戦場の中に有っても尚、一切動じていない様子からも感じられる。

 最近、強く感じる……。まるで、彼女の方が俺よりも年上なのかも知れない、と言う有り得ない感覚をこの場でも更に強く感じた。
 しかし、それも流れる景色の中での一瞬の出来事。

 自分よりも明らかに体格の良い、更に加速のついた存在を二体、蹴り飛ばした反動から一回転。再び正面を向いたその時――

 俺を三方向から取り囲むように接近しつつあるジャガーの戦士。
 しかし!

 後方より俺の右横を走り抜ける黒炎が俺の右半身を。
 そして同時に、左半身はそれよりも明るい光を放つ炎が照らし出す。

 共に炎の攻撃。この攻撃は、タバサが召喚した三体の魔将の内の二体の攻撃。

 そう、右側を抜けた黒い炎……。マルコシアスの放つ炎の氷柱(つらら)は、熾天使ミカエルと互角に戦い、
 ウヴァルとは創世戦争の際、自らの主古き月の女神レヴァナに従って堕天した元能天使パワー。常に光と闇の狭間……、ヘブライの神により悪魔と規定された古の神々との戦いの最前線に立ち続けた調和と力学を司る天使。
 そもそも、この二柱
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