第一部
第一章
プロローグ
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暖かい日差し。小春日和という言葉を具現化したような、そんな眠りを誘う陽気。目を閉じていても、柔らかい春の日差しは俺の目蓋を跨いで、朱一色を俺の目蓋に焼き付ける。あまりの眩しさに目を開けて、その雄大な蒼碧の空へと目を向ければ、真蒼な空と真白なちぎれ雲と、お日様の燦々とした光をその身に受けて純白の輝きを魅せつけるその荘厳な姿が、暖かさと清々しさを感じさせる大入道雲。さらに地上の空と表現しようか、どこまでも続くかのように広がる広大な大草原との4つのコントラスト。世界を舞台とした巨大なコントラストは、その巨大な客席を独り占めする俺の心を引きつけて離さなない。
そんな舞台のひと時に頬を撫でていく涼風は、どことなく辺り一面に青々しく生え揃う若草の香りを孕み、俺の鼻腔を仄かにくすぐる。その俺が背を預ける若草は、俺の重みに負けじと必死に俺を跳ね返そうとしているような、それほどに強く生の息吹と躍動を感じさせてくれるのもまた、この世界の清々しさか。
どこまでも完璧なまでに清々しい世界。俺の理想的な世界。無限の時と世界の可能性を感じさせてくれる、そんな世界がここにはあった。
俺は若草の上に手をつき、ゆっくりと上体を起こす。さっきまで体の芯から表層までを蝕んでいた重たい疲労は、いつのまにか消え去っていた。
そりゃあ、これほど清々しい場所で数時間も寝ていれば体も軽くなるってもんだ。毎度のことながら、今さらどうこう言うようなことでもない。
手を上に伸ばし、両の手のひらを組んだまま左右に体を曲げると、ポキポキッと腰骨やら背骨のコリが少しばかりほぐれていくような気がした。
「相変わらず疲れているね。」
ふと背後から聞こえる、小さく柔らかな声。今にも風が若草を靡かせる音にすらかき消されそうな……。それでも、しっかりと俺の鼓膜を震わせる。
「ああ、やっと来たんだ。」
「ん。ちょっと用事があってね。」
徐々に若草を踏みしめる音は大きくなっていき、やがてその音は俺のすぐ隣で鳴りを潜めた。少しだけ、涼風に流れてくる香りが変わったような気がする。ちょっとだけ、甘い香り。慣れ親しんだ、落ち着きのある仄かなラベンダーを彷彿とさせる香りだ。俺はいつものように隣へとゆっくりと腰を下ろした一つの小さな影へと視線を向けた。
「おつかれさま。」
優しい微笑み。俺の方に向いているその微笑みの主。空色をもう少し白に近づけたような、プラチナブロンドのロングヘアー。顔立ちは……なんて言ったらいいんだろう。よくわからないけど、とりあえず好み。白い肌はこの春の日差しに晒されているのにもかかわらず、俺がこの虚実の世界と現実の世界を行き来できるようになってから、ほとんど変わっていない。そしてその柔肌を隠す、白と水色のコントラストがシンプルで可愛らしいJSK。今日は珍しくこの服を着てるけど、普段よく着ている白
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