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打球は快音響かせて
高校2年
第五十一話 巣立ち
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である。

(くそ暑ィ木凪で、朝から晩まで野球だろ?そんなの地獄以外の何物でもねぇだろ、どうしてこいつら、こんな楽しそうなんだ?)

宮園の考えは、至極もっともだった。
この合宿は野球漬けなのである。
遊びに行くわけではないのだ。海で泳いで、街を散策して、そういう事をしに行くのではない。南国のリゾートとはいえ、むしろ、そんな暑い場所でどんな練習が課されるのかが不安だ。
集団活動の楽しみより、真っ先にそういう不安に気がつく辺り、宮園という人間を表していると言えようが。

「…………」

もう1人、顔をしかめている者は居た。
越戸である。こちらは、ビビっている宮園とは違い、むしろ怒っていた。

「一週間もアニメから遠ざけられるなんて……」

宮園とは違い、こちらの理由は何とも能天気なものだった。

とにかく、三龍野球部は、春休みに合宿を組む事に決まったのであった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


パコォーーン!!
「うわ」
「また行ったばい」
「あいつ本当に竹ば使いよんのか?」

この時期になると、冬のトレーニング期間も終わり、“野球”の練習が始まる。
まだ肌寒い中行うフリー打撃で、早くも冬の成果が表れる者が居た。

パコォーーン!
「……こいつ、もうエンジン全開か」

鷹合が左打席から振り抜く打球は、外野フェンス際までバンバン飛んでいき、しばしばフェンスの向こうまで飛んでいく。芯に当たっても大して飛ばず、グリップも太めで振りにくい合竹バットを手にしてこのスイング、この打球である。
一回り大きくなった体が秘めるパワーは、その片鱗ですら凄まじい。

(……やっぱりモノが違うな。あの体にあの瞬発力、そして筋肉の付きもすこぶる良い。チーム打撃ができないタイプだから、秋は7番を打たせたけど)

鷹合の成長ぶりは、指揮をとる浅海にも新たな可能性を想起させる。

(……そもそも、チーム打撃なんて必要が無いくらいに打ってくれれば……)

秋の戦い方からの進化。
甲子園まであと一歩のまま、現状維持を図るつもりはない。更に上へ。その為の、冬のトレーニングだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


パァーン!
宮園のミットが高い音を立てる。
マウンドでは、秋より体重が4キロ増えた美濃部が鋭く右腕を振り抜いていた。
まだ寒いので、スピードはそれほど出てはいないが、しかし軽く投げているようで、まずまずの球がいっている所からすると仕上がりは順調、といった所か。

パスッ!

その隣では、翼が緩い球を試していた。
その球は勿論、新球サークルチェンジである。

「ふっ!」
パスッ!

翼の細身の腕が勢い良く振られる。
しかしその指先からボー
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