囚われの姫は何想う
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迷い、悩み、渦巻く思考をそのままに目を瞑っている彼女の袖を小蓮がクイと引く。
「黒麒麟で思い出したけど、劉備軍には逃げられたんでしょ? 曹操軍が代わりに出てきたからお姉さま達も向かったっていうし……」
「そう、ですね。袁紹軍二万が黒麒麟捕獲に失敗し壊滅、劉備の領内通行を曹操が受諾、田豊さん率いる本隊は大量の糧食と物資を失い、城を放棄して我らと合流……状況は孫策軍の働き次第にかかっています」
「うっわー、改めて聞いても、ほんっとに不測の事態ばっかりじゃない」
大仰に驚く小蓮を見て苦笑を零した。
利九も報告の書簡が届いた時は目を疑った。
たった二千弱の部隊にやられた袁紹軍……そんなモノは自分達の戦よりも常軌を逸していた。それに続くように、大徳とは名ばかりの土地放棄。そして……天与の才を持つ夕がある程度戦いもせずに城を放棄した事も殊更に異質。
結果だけが記された書簡は穴が空くほど確認しても何も教えてくれず、両袁家の軍が窮地に立たされた事だけを伝えていた。
「まあ、お姉さま達は曹操なんかよりも強いから負けないと思うけど、美羽は大丈夫なの?」
「美羽様は戦えないので戦闘に巻き込まれる事はありません……が、あなたの姉が裏切れば危ういです」
再び、彼女は小蓮に現実を告げる。
自分は信用していない。非常時になれば雪蓮は小蓮ですら切り捨てる可能性もある。どちらにしても裏切るは目に見えている、と。
裏切らないよ、と小蓮は言えない。どちらもの内部事情を知っている彼女からすれば、むしろ利九の予想の方が正しいと分かっているのだ。雪蓮か、蓮華か、小蓮か……誰が生き残れば孫呉の大望を果たせるのかを考えれば、小蓮が真っ先に外されるのは必至なのだから。
しゅんと落ち込む小蓮をじっと見つめた後、利九は優しい声音を綴った。
「あなたはどうしたいですか?」
ふいに、そんな事を問うてみようと思った。心を追い詰め過ぎると今までの思考誘導が綻ぶ可能性も考えて……と同時に、己が本心を理解して欲しくて。
「お姉さま達の所にシャオを逃がそうと思ってる?」
小蓮は聞き返した。自分が姉を丸め込めると信じて送り出してくれるのか? そういった意味を込めて。
またため息を一つ、利九は呆れた。
「質問に質問で返すとは……ダメな子ですね、まったく」
「いいじゃない。探り合いなんてまっぴらだもん。正直に答えて。シャオを信じて自由にしてくれる?」
純粋な眼差しを向けられた利九は言葉に詰まる。彼女にとって、子供の真剣な目ほど怖いモノは無かった。
「あなたの事は信じていますが……向こうを信じられませんね」
「むぅーっ」
桜色に淡く染まった褐色の頬が膨れる。小蓮は口を尖らせて本気で拗ねた。ただ、暗に対立して
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