囚われの姫は何想う
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た後に孫呉の地をあなた方に返す事も出来ましたけど……疑念猜疑心というのは双方拭い切れないモノです」
厳しく突きつけられる現実。
美羽はただ、雪蓮達が生意気だからという理由で嫌い、嫌がらせをしている。
何故、生意気に思えるのか。
従っているように見えないから、というのが大きいそれは……上に立つモノとして当然の反応では無かろうか。自身を守る為にしても、諍いを起こさない為にしても、反抗の芽を叩き潰すのは当たり前の手段の一つ。
子供は素直にして残酷である。確かにわがままは言う。されども意識してか無意識か、真実を見抜く事も多々ある。大人よりも綺麗な目で人を見ている為に。
七乃は美羽の為に何が一番いいのかを考えた上で、国として足りない武力を補う為に、さらには袁家を引っくり返す為に孫呉を利用して苛め抜いている。七乃と美羽、二人の思考は違えども、求める結果は同じであった。
「お姉さまは……大徳って言われてるのに……」
「アレは偽りの大徳です。幼い美羽様を喰らおうとする虎が、どうして大徳でしょうか。同じ偽モノだとしても黒麒麟の方がまだ大徳に思えます」
冷たく言うと小蓮は苦々しげに顔を歪めた。
――膨大な他者の為に命を数扱いで殺し続ける狂人の方が大徳に思えるとは……私も歪んできたのか。いや……田豊さんからの指示に迷ってる時点でまだ堕ちてはいないのだろう。
虎牢関で見た人物、今回は自分の部下を四分の一の兵数で壊滅させた敵を思い出して、利九は深いため息を吐き、己が同志からの手紙を思い出す。
書かれていたのは小蓮の殺害指示。孫策が戦場に向かった今、使い捨てるつもりなのでもはや人質は用済みだということ。自分の大切なモノ以外何もいらない、七乃と同じ異端者二人は……子供好きな利九に残酷な命を下したのだ。
同時に七乃の手紙も着いている。
利九が望むなら小蓮を死んだ事にして軍を動かし、孫権を討ち取れ。その場合、美羽には情報を渡さずに孫家を滅ぼした後に引き合わす……というモノ。
美羽が悲しむから生かしてもいいのが一つ、そして万が一の時に交渉の道具として使えるというのも一つであった。
七乃は夕に対しても信頼を置いてはいない。目的が同じだから協力しているだけ。美羽が助かる為になるのなら、同志であろうと、自身の部下である利九であろうと、七乃にとっては駒であった。
上司と同志から与えられた二つは……利九にとってどちらも絶望の選択肢である。
仲良くなった少女を自分の手で殺すのか、それとも憎まれるのを承知の上で血族を殺すのかの二択。
全てを捨てて逃げるというのは彼女の頭に無い。この城に駐屯している二万の兵を見捨てて逃げる事も、七乃が如何に美羽を愛しているか知っている為に逆らう事も……優しい彼女には出来なかった。
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