囚われの姫は何想う
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のかという不信が瞬く間に広がる事になるのだ。
まだ教育が足りず、人質となってからは意図して七乃や利九がそういった類の教育から引き離してきた為に人質になる前に育まれていた思考が薄くなりはじめていた。まあ、美羽が麗羽と上層部を嫌っているのも理由ではあるが。
小蓮に思い出せるのは……戦ばかりの長女、それに追い縋ろうと努力ばかりの次女、自分のような年下に頭を垂れる臣下達。
小蓮には王族であるが故に友達すら居なかった。街の子供の中で同じように遊ぶも出来ず、甘えるべき父も母も無く、頼るべき姉達は国を取り戻す事ばかり。雪蓮と冥琳のように、断金となれる友を得られればよかったのだがそれも無し。
ここに来て美羽と一緒に、厳しくも優しく世話を焼いてくれる利九に対して悪戯をする時間の方が、自分の短い人生を振り返ってみても小蓮にとっては心癒される時間。
確かに王族としての誇りを持って、自分の心を偽って彼女は自ら人質になった。その時はそうあれかしと教えられていたから。絶対に助けてくれると信じ、姉達の立場も考えて。
されどもまだ幼く、甘えたがりな一人の少女は……時間と共に想いがズレていた。
ストックホルム症候群というモノがある。
人質に取られた者が犯人に対して肯定的な感情を持つモノ、または犯人が人質に対して肯定的な感情を持つモノ、そして助けようとしてくれるはずのモノに否定的な感情を持つモノという三つの状態。
小蓮は長い間、籠に閉じ込められた事と、七乃達による思考誘導によって重度の状態に陥っていた。
決して危害を加えられず、外部の情勢を直接見る事も無く、勉強を教えて貰ったり、鍛錬に付き合わせて貰ったり、城の中だけであっても遊び友達が居たり……そんな人質にしては平穏な時間が長く続いたならば、感覚が麻痺するのは当然であった。
雪蓮と蓮華が願っても一度たりとて会わせず、手紙すら簡易なモノしか届けず、思春や明命を強制的に使いっぱしりにして、内密の情報交換すら徹底して禁じた七乃の手腕も理由ではある。
恐るべきは人心操作能力の方。袁術軍による対孫呉用の札は……受け継がれてきた血を脅かす猛毒に育っていた。
「ねぇ、利九」
昏い……少女の高い声ながらも重い響きを持った声が零れた。
ハッと気を持ち直した利九はキリと表情を引き締め、咳払いを一つ。
「なんですか?」
「分かり合う事は出来ないの?」
「……袁家の上を一新し、世を平定しなければ無理でしょうね」
「私が説得すれば協力して――――」
「無理です。やってみなければ分からない、というのはあなたが本当の意味で戦を知らないので却下。死んでいった兵、想いを馳せている兵……そこに生きている者達の為に、戦をした者は簡単には妥協出来ません。初めから素直に従ってくれさえすれば、協力し
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