囚われの姫は何想う
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つけられて精神を擦り減らし、さらには姉達への不信が大きく育ちつつある。
七乃は此処を出る前、利九に告げていた。
『夕ちゃんが言うには、今回の戦を機として孫呉の地を取り戻そうとするはずですから、血族に対する離間計を完成させちゃいましょうか♪ 上手く行けば利九ちゃん専用の姫様も手に入りますし一石二鳥ですよぉ♪』
ゾクリと寒気が一つ。利九は普段通りの声音でニコニコと話す七乃を思い出して恐怖していた。
本来、小蓮はこのように自由の利く人質になるはずでは無かった。
七乃よりも上に位置する袁家上層部の決定では、欲望で心が肥え太った豪族への許嫁……と言う名の愛玩人形にされる予定であったのだ。
七乃は幼女趣味の守備範囲が狭く、拘りも強い。よって小蓮は興味の対象にはならず、上層部の不信を躱す為に止めなかった。しかし……七乃よりも守備範囲の広い利九がそれを止めた、というか少女が大人の男に穢される事が我慢ならなかった。
それから七乃が行ったのは、小蓮に対する情報開示と心理掌握。利九が豪族に捧げられる所を軟禁に変えたとわざわざ話し、袁家上層部の悪辣さに自分や美羽も従うしかないのだと……嘘と本当の証拠を混ぜて信じ込ませた。
利九は小蓮に対して孫呉の者達の姿を思い知らせる事には同意だった。例え上層部の決定と七乃の策に嵌って人質に差し出すとしても、子供というのは如何なモノか、次女を出せばよかったのに、と憤っていた為に。
孫呉側としては、雪蓮の王としての気質から、早急に蓮華を成長させる必要があったいう事情も無きにしも非ず、たが七乃含めた袁家の悪辣さを舐めていたのも一つ。
――政治の駆け引きに子供を巻き込むのなら、自分達の望みの為に若き未来を縛るのなら、それ相応の対価を支払って貰いましょうか。
利九の心はそんな所。
彼女は七乃のように世界に一人しかいらないわけでは無い。幼い少女達が好きでありながら穢す事など言語道断という変態淑女。全ての少女が彼女の守る対象なのだ。
故に、七乃に恐怖を覚えて震えた。暗闇の淵から同じになれと手招きする狂った化け物に。自分も周りも全てが壊れても、たった一人が幸せならそれでいいと願う異端者に。
小蓮は利九が震えた事に気付かず、ただ自分の姉達が行った戦を頭で整理していた。
――こんな……こんなに人を生贄にして……一言も引き止めてくれなかったのに、手紙にだって簡単な近況しか書いてないのに。
彼女はまだ幼い。姉のしている事が自分の救出の為と分かっていても、王として、国の絆を強固なモノにする為の必要な犠牲と呑み込むには早すぎた。
血族を大切にする事はこの時代の大陸の王には最優先事項。そうでなければ……同じ血の流れるモノを助けずして、どうして民を助けようとしてくれるのか、長い安寧を齎せる
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