囚われの姫は何想う
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! いい加減休憩させてよ! 昨日は一刻くらい前には休憩したでしょ!」
透き通る碧眼をうるうると潤ませる少女の名は孫尚香――――真名を小蓮、姉達が必死になって救い出そうとしている籠の中の姫君。
彼女は人質、袁家上層部と七乃があらゆる手を使って此処に縛り付けた孫呉に対する首輪の役割。しかし人質と言っても監禁したり、牢に繋いだりしているわけでは無い。
政治的に身柄を預けられているだけであり、城の中だけ自由に動けるので言うなれば軟禁状態。ただ……逃げようとすれば、城や街に配置された隠密や監視役によって殺されるというオマケが付いている。
ちなみに七乃や美羽がいる状態であれば、明命や思春等の孫呉勢と、財を接収されて怨みを持った豪族からの暗殺や連れ去りへの警戒を最優先として倍以上の隠密が控えていたりする。
小蓮の激昂に対して、大きくため息をついた利九はやれやれと首を左右に振った。
「この程度で音を上げるんですか? 昨日は一区切りついたから休憩を挟んだだけです。それにあなたも孫姓に名を連ねているのならば、後々は今日よりも机に噛り付くのは必然なのでいい経験になるかと思いますが?」
グッと言葉に詰まった小蓮を見て、目を細めた利九はトントンと机の上の書簡を叩き、穏やかな声ながらも焚き付ける。しかし次に続けた言葉は冷たい声であった。
「特にこれはあなたの姉達が行った戦の戦後処理の一端です。血族であるあなたが知って当然のモノ。アレらがもっと真面目に戦っていればこんな膨大な量は無かったんですけどね。どうしてこんな力を出し切らない戦の仕方をしているのかは……あなたも気付いているかと思いますが、美羽様を殺す為です。主力が居ないと言えど孫呉の精兵が、黒麒麟一人の率いる軍勢にここまで無様に負けるわけないですから」
言われて直ぐ、悲壮に顔を歪めた小蓮はふいと俯く。
今、小蓮が目を通している書簡は劉表との戦や劉備軍との戦関連のモノ。
これは七乃の策の一つである。
自分の血族の戦がどんな事態を引き起こしているか、醜悪な現実をまだ心身共に成熟しきっていない小蓮に叩きつけるという異質な策であった。蓮華達は欺けると思っていたようだが、それよりも前から、欺瞞分裂をさせた時点で……虎の裏切りを看破出来ていない夕では無く、七乃にしてもそれすら理解して目を光らせていた。七乃達が気付けていないのは揚州内の内部工作のみであり、戦場での戦い方は読み筋。
小蓮とて、頭が悪いわけでは無い。自分が人質であることがどういう状況を生んでいるのか理解出来てしまう。
何も出来ない自分の為に、どれだけの人を犠牲にして、どれだけの財を浪費し、どれだけ民を苦しめるのか……命の責という重圧をその小さな背に乗せられたのだ。
効果は上々。小蓮は戦をすればどうなるかを見せ
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