ビシュ
[6/8]
[1]次 [9]前 最後 最初
』と意識が抜けて、「これはやりすぎだね」と思った。「俺の造る酒は、何も音を立てないで、ゆっくりとしがらみを腹に落とし込み、頭蓋の奥にやさしく大人の心持を染む。そんな風になればいいのに」
最高の酒はどのように作ればよいか。細胞一つ一つに黒がなければ、白く。少し悪意が滲んで琥珀色に。アホの魂があれば、炭酸に。右を見れば人の
過ごす四角い箱があり、その中で人の笑い声を聞けば、心を奪われるので、手の中のカメラを握る。左を見れば、緑と黒の雑木林がひどく威圧的に迫り、その小道を行けば、緊張感でシャッターを切るタイミングを探す。この間に酒の事を考えることなくいられるのは幸せか? それとも、「ネチネチ」と「美味くなれ」と『念』を入れるのをよしとするのか。そのすべてが正解なのか? 何故そんな事を悩むのか?
「自分の『念』が入ったこの酒で、人が傷つけば、自分のその部分、例えば、相手のことをじゅうぶん考えず、頭の中の一粒の快楽を膨らませ、独りよがりにさせた、その部分が失われる」
ビトは「ぼおっと」宙を見つめて、「始めから失われておこう」そう、頭に浮かべてみたりしていた。
§
「遠くで風がカタカタ鳴り、心の奥でゆっくりと砕けてゆく様子を、目を閉じて感じていた」そんなことを言いたくて、目を閉じて、酒を口に運ぶのだけれど、一向に風は吹かず。なおかつ酒の味が染み込んでこない。「やけにあっさりとした、地味な酒だな」この程度のコクで、やたら、高い金を取るな。そう考えたのだけれど、以前、あの村から買った酒に比べて、安い? いや、一時間女を楽しめる位、高かった。「俺は、まだ、若い。この、酒というやつと、語らうこともできれば、それに、文句を言うことも出来る。つまり、溺れることのない男」
部屋を出るとき、鍵を忘れたけれど、目の前の女が結構きれいで、それの「結構」が取れるまで、少し待った。部屋に戻るとき、急げば、その向こうのキレイな女を見ることが出来ると考えて、少し焦った。二度目、部屋を出た時には、何もなかった。心の中に、恋愛の求めがあるだけだった。いつかこれが具現化して顕れる。それを、待とう。いや、それは、先ほどだったか。
集中していれば、かなりの確率で、馬鹿な出来事から逃れる事が出来る。集中するという事は、馬鹿な出来事を、一刻も早く消化する事につながる。すべてにおいて、逃げるという事は、緩慢な意識を愛し、他人から疎んじられる結果をもたらす。
「ふぅ」と、息を吐いて、「こんなに生き急いだら、他人の分まで不幸を摘み取って、時代が進みすぎて、誰も、私が解決した問題を、思い出すことも無い」いいじゃない? 誰も知らない、グラウンドで、または、プールで。人知れず鍛え上げる事の喜びのうち、もっとも大きいのは、この、心と肉体を、人にさらす事を夢見ることができる、という
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ