ビシュ
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ありとあらゆる淫らな事と、やさしさに溢れた母性が浮かび、それを吟味するように転がしては、不安がないか考えている。もちろん疑念などがあっても、口になどしないのだけれど、考える事でどれだけの『邪』が払えたかで、この人は満足なのかもしれない。
「ビト。良い? 良いの?」それくらいを訊くに留めるくらいである。心の動き方一つで魂の味が変わる。その因果をどうやって理解しよう? どうやって? ひとつ間違いを犯したほうが、美味しい魂になるやも知れない。
それぞれ、部屋に一人きり。長い間、自分を染み込ませた壁を見つめて、そこにある時計を眺めていた。頬白んだ記憶は、次第に形を変え、各人の中に独特な紋様を描き出していた。ビト。最初の記憶から間もなく、悲鳴を聞く。階段を何段も飛ばして、心、大人になる。ある酒飲みの死。窮屈な反省を迫られる。卑屈な観念を仕事に込めようじゃない。そう思う。そのうち、身体のコンプレックスを克服しなければ、『念じ』など出来ないよね? などと言って、先輩を馬鹿にしたりした。「愛しあいたいね」と、想いを送りながら、時を経る。どうにか酒に、愛だけを染み込ませ、納得したかった。逃げたかったのだ。
「おい! ビト! お前の味にキレイな恋が混じっているぜ? どうした恋心忘れさせてどうする?」
『酒飲みの死』この時間にみんなで酒を飲み、階下の者が、堕ちてくる邪念をチェックする。ビト、十三歳。恋よりも先に、愛を求めた早熟な『念じ手』
始めのうちは、下階にいて、天から堕ちてくる力を感じなさい「勉強せい」と言われ、阿呆のように待っていれば、こんなものかと安心して。また、ひどくキレイな心、堕ちてくると「これは素晴らしい」と、驚嘆したり。「アホか! 酒飲んでキレイが堕ちてどうする? 汚いが堕ちなあかんだろ! アホ!」と言う言葉に「なるほど」とうなずいて、「今までの先輩、結構おいしい感情を堕としやがる」とにが笑う。一つ階を上がれば、上から堕ちてくる酒のおいしさ。これにはまた、良き心が含まれていて、「悪酔いですか?」と笑えば、黙っている先輩がいる。「これが分れば、どうにか漏らさず、善意だけを残して、心地よい酒を提供できるだろう」などと、言うのである。「分ればいいのですか?」と老人に訊くと、「分らないままでどうして酒を美味くできる?」と返される。「しかしながら、分る人とできる人は違うでしょう?」とまた返せば、「分る人に任せた方がいいよ。責任を押し付けられるから」と笑っていた。誰も、自分の心が心地よいかどうかなど知らないし、もしそれが本当ならばうれしいだろう。
ビトはふと思う。これは、『酒を作る』、『念を入れる』以上にこの仕事に携わる人間の器量、気質を自慢し、世の中を上手く渡ってゆく処世術なのだ。それ以上を求めてはいけないし、なおかつ自分を誰にでも通じる人間であると信
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