志乃「……」
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答えになってなくね?」
ちゃんと人の話聞いてんじゃん。俺に耳が無いって言いたいのこいつ。お前の耳の方が変だろ。そしてお前も変だ。
当然の顔をしながら俺が志乃の答えを待っていると、志乃はまた一言だけ呟く。
「……風邪」
「風?……風邪?」
ん?なんか聞き覚えが……ちょっと待て、『風邪』と『殺す』?
あ。
志乃の意図がやっとつかめた俺は拳を握り、静かな足取りでソファにいる志乃の方に向かって歩き出し――
新聞を読んでいる妹に対し頭を下げる。
「本っっっっっ当に、すんませんでしたっ!!!」
ソファに座ってのけ反っている志乃の頭辺りに到達するぐらいに頭を下げる。これが普通の兄の姿なのだろうか。どちらかというと、浮気をしちゃった結果嫁に頭を下げるような……。いやいや、こいつは嫁じゃない。妹だ。
って、そんなのはどうでもよくて、今はとにかく妹に謝らなきゃならない。マジで。
これは完全に俺が悪い。妹は『殺す』以外は正しい事を言っていた。そして、それを冗談と捉えた俺は完全に、忠告を頭から放り出しちまっていた。
――『兄貴、喉壊したら殺すから』
昨日、風呂上がりに志乃から言われた言葉。それを俺は本気と受け取っていなかった。
いや、普通本気にしないでしょ。『殺す』とか『死ね』とか言われてマジに受け取る奴、そうそういないよ?つか、俺殺されんの?
俺も薄々気づいていた。俺のこの症状は花粉症では無いと。深夜にひっそり熱を測った時の事を思い出すと余計にそう感じる。
俺、恐らく風邪引いた。
この事実を、俺はどうやって志乃に伝えればいいのだろうか。というより、伝える必要があるのだろうか。
この妹にそんな事を言えば、恐らく俺は毒を盛られて死ぬだろう。これがガチな気がして本当に怖い。
仮にそれが無いとしても、こいつは風邪を引いた俺の面倒を見やしないだろう。絶対に。
でも俺が知らんぷりをしたら、もしかしたら風邪を志乃にうつしてしまうかもしれない。ピアノの練習が出来なくなってしまう。それだけは何とかして避けたい。
そこで俺は……
「悪い志乃。ひょっとしたら俺、風邪引いたかもしれ……」
素直に打ち明ける事にしたのだが……その前に世界が暗転した。
あぁ、俺妹にアッパー食らったんだ……。
*****
気付いたら、俺は自室のベッドに寝かされていた。
横を見ると、志乃がリンゴをむいていた。って、こいつ包丁上手く使えたっけ?
そこで志乃が俺と目を合わせる。そして、優しげな笑みを浮かべて一言。
「まだ寝てないとダメだよ兄貴。熱下がってない」
俺は言葉を失った。
今
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