涙の主と嘘つきな従者
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光線が、消える。
五重魔法陣・御神楽を防御も出来ずに喰らったルナは倒れ、魔法陣の範囲内で霧幻奈落によって眠っていたセスも、何が何やら解らぬまま倒れた。
「これが、ギルド最強候補の魔導士・・・」
無意識に、ヴィーテルシアは呟く。
相手である2人だって、弱くはなかった。妖精の尻尾で言うS級魔導士レベルではあったとヴィーテルシアは思っているし、現にティアについてS級クエストの討伐対象を何度も倒してきたヴィーテルシアではセス1人に手も足も出なかった(相手が万能攻撃系、自分が変身系の魔法を使っていたから、というのもあるだろうが)。
が、目の前で静かに佇むミストガンは、結果としてほとんど無傷で2人相手に勝利してしまった。
超人か、と呟いて、ヴィーテルシアは瞬きを繰り返す。
「大丈夫か?」
「え?あ、ああ、問題ない。体力も魔力も限界だし歩くどころか立ち上がる事も出来ないけど問題ない」
「・・・それは問題あるんじゃないか?」
突然声を掛けられた為、自分でも何言ってるか解っちゃいない。
5本の杖を背負い直したミストガンはヴィーテルシアに向き直ると、一体どこから取り出したのか文庫本サイズの瓶を差し出す。
「・・・それは?」
「治癒薬だ。歩けるほどには回復するだろう・・・ティアを助けるなら、動けないと意味がないからな」
「確かにな・・・すまない、お前には何から何まで世話になる」
ミストガンの言葉に苦笑しながら、ヴィーテルシアは瓶を受け取る。
小さく瓶を揺らすと、ドロリとした明るい黄緑の液体がゆっくりと揺れた。
「すまないが、私が手伝えるのはここまでだ。私にもやらなければならない事がある」
「解っているさ。きっとそうだろうとは考えていた。ここは私に任せておけ・・・と言える状態ではないが、必ずティアを助けだす。お前は気にせず、やるべき事をやっていてくれ」
「すまない、恩に着る」
「それは私のセリフだ」
ヴィーテルシアがクスクスと笑う。
小さく会釈したミストガンは、その体を霧のように、ふわりと空気に溶け込ませた。
姿も気配も完全に消える。
「にがっ」
明るい黄緑の液体を飲み干し、その苦さに顔を顰めながら瓶をその場に置く(ゴミはゴミ箱に、と言いたいところだが、生憎ゴミ箱がない)。
それと同時に体が淡い黄緑の光に包まれ、ヴィーテルシアの傷を癒していった。
体力も徐々に回復し、何事もなかったようにヴィーテルシアは立ち上がる。
勿論、少しの傷は残っているし、魔力は女帝の業火1発分ほどしか回復していないが。
「さて、と・・・行くか」
乱れた金髪を三つ編みに結び直す時間さえも勿体なく感じ、金髪はそのままにヴィーテルシアはオーロラガー
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