涙の主と嘘つきな従者
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に「まあね」と頷いた。
しばらく笑っていたライアーは、ふと自分の髪を見つめる。
アニストを演じるべく伸ばした黒髪。
でも、演じる必要はもうない。だから――――――
「・・・切ろうかな」
「え!?」
ポツリと呟いた言葉に、ティアが大きく反応した。
思わぬ反応にライアーもびくっと驚く。
「切るの?」
「あー・・・多分」
先ほどの大きな反応に戸惑いながらも頷くと、ティアが不機嫌そうに眉を顰める。
何か気に障る事を言ったのか、と内心焦りまくりのライアーに、ティアはずいっと顔を近づけた。
突然顔が近づいて、ライアーは思わず仰け反る。
「え、えーっと・・・どうした?」
「切るのね?本当に」
「た、多分だけどな。でも、俺としては髪短い方が好きだし・・・」
近い、と思いながらライアーは答える。
不機嫌そうな表情はそのままに、ティアは口を開いた。
「私、ライアーの髪は長い方が好きよ」
「!?」
たった一言。
それだけなのに、ライアーの顔が、自分でも解るくらいに真っ赤になった。
耳の横に心臓が移動してきたのかと疑いたくなるほど、鼓動がうるさい。
「でもまあ、切っちゃうなら仕方ないか・・・」
「き、切らないっ!」
「・・・は?」
少し残念そうなティアを見て、反射的に叫ぶ。
ティアはきょとんとした表情で、ライアーの顔をまじまじと見つめた。
それも何となく恥ずかしくて、目線を逸らす。
「切るのはやめる。何となく長いのも気に入ってたし・・・結わえる事にする」
「・・・そう」
ライアーの言葉に少し嬉しそうなトーンでティアが呟く。
そしてライアーの後ろに回り、くいっと髪を引っ張った。
「うわっ」
突然の事に、ライアーの頭も引っ張られる。
スーッと髪の間を指が通っていく感じがした。続いて髪が1つにまとまる感じ。
そして最後に、髪を括るようにキツく縛られる感覚。
「はい、出来た」
パッ、と手が離れた。
何が起こったのかイマイチ解っていないライアーに、ティアはショルダーバックから取り出した大きめの手鏡を渡す。
受け取ったライアーは鏡を覗き込んで―――――気づいた。
「あ」
長い黒髪が、首の少し上辺りの位置で1本に結わえられている。
少し頭を振れば、それに連動して黒髪が揺れた。
満足のいく出来(と言ってもゴムで結んだだけ)だったのかティアは頷くと、こてっと首を傾げる。
「どう?私的には上出来なんだけど」
「・・・る」
「ん?」
ライアーが何か言ったが、小さすぎて聞こえない。
首を傾げてティアが聞き返すと、ライアーが無言で立ち上がった。
俯いている為、顔が見えない。
「え・・・っと、ダメだった?」
困ったように
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