暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
涙の主と嘘つきな従者
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っていうのは俺のような者を言うんだ。ティアは違むぅっ!」

う、と言おうとして、言えなかった。
一瞬何が起こったのか解らなかったが、徐々に今の状況を理解していく。

(・・・口が塞がれている。これはティアの――――――――手?)

白くて、ひんやりとした手。
それがライアーの口を塞いでいた。
下げていた目線を前に戻して――――――ぎょっとする。

(う、うわっ!?)

まず見えたのは、青い瞳だった。
続いてその顔全体、輪郭、青い髪、白い帽子、帽子から垂れる青いリボン、乗り出した体、それを支える細い腕――――――。

(近っ・・・近すぎるだろこれは!)

まあ、ライアーの口を手で塞ぐと言う事はそれなりに近づくのだが、気づけばティアは握り拳2つ分くらいの距離まで近づいており。
女性というものにあまり免疫のないライアーは、それだけで赤くなる。

「全く・・・さっき私も似たような事言ってたけど、聞いてる側からしたらバカらしいわね」
「なっ!」

ティアは呆れたように肩を竦めた。
これにはライアーも思わず怒る。
自分はこの事でずっと苦しい思いをしていたのに、目の前の彼女はそれをバカらしいの一言で片づけてしまった。

「だってそうでしょ?自分の苦しみを他人に話したって、その苦しみを解ってもらえる訳じゃない。口では解るって言うけれど、同じ経験をしていない奴に解る訳ないのよ。そんな上辺だけの同情、求めるほどの価値があるかしら?」

スッ、と手を下げ、ティアが首を傾げる。
ライアーはと言うと、呆気にとられていた。
同情を価値で見る人間なんて見た事がない。

「無価値な同情をされるくらいなら、私は過去なんて見ないし語らない」

「だってそうでしょ?」と言い切って。
立ち上がって背を向けていたティアは、くるりと振り返った。
その顔には、自信だけで構成された笑み。






「振り返るほどの価値が、過去にあるのかしら?」






彼女は主と同い年、つまり自分より1つ年下のハズ。
そんな少女の言葉に、ライアーは何も言えなかった。
多分言える事もあったのだろうが、何かを言う気になれなかった。
反論出来る事だろうに、反論出来ない。

「・・・ないな。振り返るほどの価値は」

ふはっ・・・と笑い声が零れる。
そうだ、そう言われてしまえばそうなのだ。
振り返るのが苦しいのなら、振り返る事を止めればいい。
そんな単純な事に言われなければ気づかなかったのか、とライアーは自分の事ながら呆れる。

「でしょ?悩むだけ無駄なのよ。だったら悩まなきゃいいんだわ」
「ははっ、お前は正しいな。恐ろしくなるくらいに」

ライアーの言葉に、ティアは一瞬きょとんとしたが、すぐ
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