涙の主と嘘つきな従者
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変えたい・・・いいか?」
選んだのは、河川敷だった。
腰を下ろし、膝を抱えてライアーに目を向ける。
ライアーはしばらく黙っていたが、ゆっくりと口を開き、ポツリポツリと語り始めた。
「・・・俺には、2つ年下の妹がいた。アニストという名で、親は妹を愛していた。勿論、平等にとまではいかなかったが、俺も親に愛されていた・・・と思う」
そう言いながらも、ライアーには親に愛されていたと言える自信がなかった。
どちらかといえば、愛されていなかったという方が自身を持てる。
チラリ、とティアに目を向けると、彼女は「嘘つきと正直の兄妹ってなかなか面白い名前付けたわね、アンタの親は」とズレた事に興味を持ったようだ。
「俺は妹が好きだったし、アニストも俺を慕ってくれていた。俺は何をやってもアニストには勝てなかったが、武器の扱いだけは俺の方が得意だった」
背負った槍、フィレーシアンの柄に触れる。
カトレーン一族の加治屋が造ったこの槍は今日受け取ったばかりだったが、もう何十年も一緒にいるような気がしていた。
同じくクロスの従者であるスバルのエウリアレーも、ヒルダのセルリヒュールも、カトレーンの鍛冶屋お手製である。
「妹は両親の誇りだった。アニストも期待に応えようと頑張っていた・・・頑張って、いたんだ」
視界がぼやけかけ、慌てて服の袖で拭う。
ティアは無言で川を眺めながらライアーの話を聞いていた。
日の光を受けた川が、キラキラと輝く。
「・・・けど、アニストは死んだ―――――――自殺、だった」
「!」
ぴくっとティアが反応し、ライアーに目を向ける。
その目が信じられないモノを見るように大きく見開かれていた。
「部屋に遺書が残っていて、こう書かれていた。“もう疲れました”と―――――」
期待、しすぎたのだ。
期待されればその期待に応えようと頑張る。が、その期待が大きければ大きいほど、期待に応えられるか不安になってくる。
もし応えられなかったら―――――そう考えてもおかしくない。
「父さんも母さんもアニストに期待しすぎた。本来なら俺が背負うべき期待も、全てアニストに向かった。だから・・・疲れたんだ。期待される事に」
期待するのが悪い事だとは言わない。
が、期待は時に人を押し潰し、苦しめる。
「葬式の間、父さんと母さんはずっと泣いていた。泣く事しか出来ない人形のように、ずっと」
脳裏に蘇える、2年前のあの日。
来る人来る人黒い服を着ていて、ライアー達は来る人全員に頭を下げる事を繰り返していた。
お悔やみ申し上げます、と言われる度に、ライアーは苦しかった。
何も出来なかった自分への不甲斐なさで胸がいっぱいで、その後どうして
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