涙の主と嘘つきな従者
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「?」
名を直訳され、困ったように目線を逸らして頬を掻くライアーに、ティアは小首を傾げて呟いた。
その呟きに目線を戻し、こちらも首を傾げる。
「私なんて涙だもの。しかも由来が、私が生まれた瞬間一族全員が泣いたから、ですって」
「え、でもそれは・・・」
命の誕生に対する感激じゃ、と言いかけて、止まる。
その青い瞳にふわりと現れた愁い。
口元は薄く笑みを湛えているが、その笑みは無理矢理作ったような、楽しさも嬉しさも感じられない笑みだった。
「酷い話よね・・・生んだ母親からも、“こんな子いらない”って言われたらしいの。唯一兄だけは私の誕生を喜んでくれたけど、愛人の子である兄の一族での立場を更に悪くするだけだった」
何かに触れるように、右腕が空に伸ばされる。
指先が何かを求めるように動き、その手が柔らかく何かを握りしめ、下がった。
「弟は聖なる子って意味で十字架。兄は解らないわ、愛人が付けた名だから」
ふ、と目を伏せる。
青い髪の一房を、耳にかける。
それだけの仕草なのに、彼女の儚さが増した気がした。
今にも空気に溶けてしまいそうな―――――そんな感じ。
「私は涙の子。一族に居場所はない、出来損ないのいらない娘。クロスと兄さんは良くしてくれてるけど、それは2人の自由を奪っている事と同等じゃない」
握りしめた拳が震える。
俯き、逸らしていた目がティアを見つめる。
抑え込んでいた全てを放つように、気づけばライアーは駆けていた。
「そんなの――――――――――っ!」
何かを言いかけ、止まる。
それと同時に感じる、自分を囲むような力。
じわりと滲むように、元々冷たいティアの体に温かい熱が伝わる。
小さく目線を動かせば、真横で揺れる長い黒髪。
「っ言うな!それ以上言うなっ・・・!」
悲痛な声。
ぎゅぅ、と込められた力が強くなる。
即座にティアは理解した。
初対面の奴、しかも男に抱きしめられている、と。
「いらない奴なんかじゃない。お前はっ・・・俺とは違う!」
「!」
俺とは違う。
確かに、ライアーはそう言った。
ティアはライアーを正面から見るべくその方を掴み、引き離した。
そして、思わずため息をつく。
(何で―――――そんなに泣きそうなのよ)
今にも泣きだしそうな表情。
泣くのを堪えるようにぎゅっと唇を噛みしめて、それでも真っ直ぐにこっちを見る少年。
「・・・何か、あったの?」
無意識のうちに、そう訊ねていた。
その問いにハッとしたようにライアーは目を見開き、少しの間目線を逸らす。
それから十数秒後、意を決したようにライアーは口を開いた。
「悪いが場所を
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