涙の主と嘘つきな従者
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は大きめの白い帽子の下から覗く顔は、誰がどう見ても可愛らしい。
長く贅沢な睫毛に縁どられた青い瞳。スッと通った鼻筋に、きゅっと結ばれた小さな唇。青い髪は肘に届く長さで下ろしてある。
誰かに似ているな、とライアーは思った。が、思い出せない。
「何」
「へ?」
「さっきから人の顔ジロジロ見てるけど、私の顔に何かついてるの?」
「い、いやっ・・・そういう、訳じゃ」
「だったらジロジロ見ないで」
「す、すまない」
不機嫌そうに小さく息を吐いた少女。
その顔を見て、ライアーはふと気づいた。
「主?」
「は?」
少女が怪訝そうな顔をする。
それに対し、ライアーは納得したように頷いた。
(そうか。誰かに似ていると思ったら主に似ているんだ)
今日から仕える事になった生涯の主―――――クロス。
少女は彼に似ている。
髪の色や瞳の色は同じだし、背の高さも同じくらいだろう。顔立ちもどこか似ているし、細身な所もそっくりだ。
すると、ライアーの呟きを聞いた少女は、何かに気づいたように「あ」と呟く。
「もしかしてアンタ、クロスの従者?」
「え?ああ・・・主を知っているのか?」
ライアーの問いに少女はキョトンとした様に瞬きを繰り返す。
10回目の瞬きを終えると、はぁ、と溜息をついた。
腰に手を当て、真正面からライアーを見つめる。
「私、クロスの双子の姉だから」
停止。脳だけ稼働。
双子の姉、という言葉の意味は当然解る。が、ライアーは1つ聞かされている事があった。
主の祖母であるシャロンは、こう言ったのだ。
『いい?クロスの姉は三流、出来損ないなのよ。姉を名乗るようならすぐに教えなさい。アンタにクロスの姉を名乗る権利はないとね!』
が、はっきり言ってライアーには、彼女が出来損ない等には見えなかった。
容姿は整っているし、何となく頭がよさそうな雰囲気がある。ズバズバとモノを言う感じだが、間違った事を言っている訳ではない。
近寄りがたい雰囲気ではあるが、何でか放っておけない。見た目だけでも解る戦闘慣れした雰囲気だが、触れたら消えてしまいそうな儚さがあった。
「・・・姉?」
「そう、ティア=T=カトレーン」
漸く呟いた言葉に少女―――――ティアはこくりと頷き、自己紹介をする。
が、名前以外には何かを言う訳ではなく、その後は先ほどまでのように沈黙していた。
その目が真っ直ぐに自分を見ている事に気づき、そういえば名乗っていなかったとライアーは口を開く。
「俺はライアー・ヘルハウンド。よろしく」
「随分な名前ね。嘘つきな地獄の猟犬って」
「・・・出来れば直訳しないで貰いたい。自分の名前は好きじゃないんだ」
「ふぅん、でも私よりかはマシなんじゃない?」
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