涙の主と嘘つきな従者
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すると、怒りで荒立っていた心がスッと静かになり、今自分が立つこの場所や状況の情報―――――相手の位置、利用出来そうなモノの場所など―――――が正確に入ってくる。
目を閉じて、ゆっくりと開いた時には、既にライアーは冷静さを取り戻していた。
ふぅ、と短く息を吐き、目の前を鋭く見据える。
(―――――大丈夫、いつも通りにやれば勝てるハズだ。勝率75%・・・くらいか)
そう思いながら、ライアーは知っている。
今の自分じゃ、“いつも通り”が出来ない事を。
その原因(という言い方もどうかとは思うが、それくらいしか当てはまりそうな言葉が無かった)は、ヒジリの後ろで死んだように眠る少女の、幻。
チラリ、と幻に目を向け、目を伏せ、唇を噛みしめる。
(腰を落として、槍を引き――――――)
それは、ライアーお得意の突きの構え。
武器魔法―――――愛槍フィレーシアンの形状を近距離戦闘用武器に変換させる魔法の使い手であるライアーは剣や斧も勿論扱えるが、1番扱いやすいのはこの槍なのだ。
特に得意なのが突きであり、“突く事”に関してはギルド1の威力を叩きだす。
(しっかり前を見据え―――――)
キッ、と前を睨む。
ふわり、と風が黒髪を揺らす。
(駆ける!)
自分の中で鋭く、叫ぶように呟き、思いっきり地を蹴った。
飛ぶように駆け、肌で風を感じながら、フィレーシアンの切っ先をヒジリへと向ける。
近距離線を得意とするライアーは、相手に距離を取られてもすぐに距離を詰められるようにと速度重視の戦法を叩き込まれている。同じ距離を走るにしても、最初の踏切に込めた力によっては跳躍距離が変わり、速度にも影響してくるものだ。
「ハアアアアアアッ!」
“オントス・オン”の中で1番のスピードを誇る魔導士、それがライアーだ。
勿論、速度が由来の異名を取るティアや、速度を上げる魔法を使うジェット、MAXスピードのハッピー辺りと比べてしまえば遅いが、それでも間違いなくギルドで10本の指に入る速度が出せる。
「貫けえええええええええッ!」
叫び、槍を一直線に振るう。
命中率の高い、ライアーが身につけた槍術の中の突き技の一種。
何の迷いも躊躇いもなく、ただ真っ直ぐに放たれる突き。
誰がそのような名称を付けたのかは不明だが、『直天突』と呼ばれるその技は、ライアーの得意な技だった。
――――――――が。
「来たな地獄の猟犬!」
「!」
「特殊拘束・死の拘束!」
ヒジリはそれを解っていたかのように、魔法を発動させる。
思わず止まったライアーの足元に魔法陣が展開し、そこから漆黒の、古代文字で構成された鎖がライアーを締め付けた。
「なっ
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