涙の主と嘘つきな従者
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薄い笑みを浮かべ、ティアが自分より背の高いライアーを見上げる。
すると、ライアーはバッ!という効果音が似合いそうな速度で片膝を立てて座った。
そのまま頭を垂れ、立てた右膝に右腕を乗せ、左腕は真っ直ぐに下ろす。
「感謝する、我が主の姉君よ」
―――――そして、言った。
その姿は令嬢とその執事のような。
「・・・え、はあ!?」
先ほどまでと全く違うライアーの口調や様子に、ティアは思わず目を見開く。
が、ライアーの様子は全く変わらない。
頭を垂れたまま、続ける。
「この恩は必ず返す。俺はお前の弟君の従者だが、お前とも従者契約を結ばせて頂きたい」
「な、何言ってるのよ!アンタも知ってるでしょ?私にその資格はないのよ。ていうか、私と契約したらアンタ・・・お祖母様に消される可能性だって・・・」
「解っている!」
ティアの言葉を、強い口調で無理矢理遮る。
そう―――――ライアーはクロスに仕えるべくフルールを離れ、マグノリアに来た。
それ以外の理由はない。だから、クロスに仕えるのを止めた瞬間、ライアーはフルールに強制的に戻される。カトレーンの異端児であるティアと従者契約するのも、強制的に戻される事は無いが、シャロンに消される恐れがあるのだ。
が、そんな事ライアーはとっくに知っている。
「消されてもいい、何があろうと構わない!俺は、お前をっ・・・!」
そこまで言いかけ、止まった。
いや―――――止まったというより、何を言おうとしたのか忘れたのだ。
(お前を、何だ?)
つい数秒前まで頭にあって、言おうと思っていた事のハズ。
ライアーは、自分の記憶力はいい方だと思っている。幼いころの思い出もある程度鮮明に覚えているし、細かい所では今日マグノリアに行く為に乗った列車で食べたサンドイッチに挟んであった具の順番も覚えている(左からレタス、卵、ハムだった。トマトが入っていたが、苦手な為スバルにあげた)。
なのに、数秒前の事も覚えていないとは。
とても大事な事だった・・・気がする。本当なら勢いに任せて言うような事じゃなかった気も。
(あれ・・・?)
必死に脳内を漁る。
漁っても漁っても、これだ!という言葉が思い出せない。
どれをどう当て嵌めても違和感がある。
思い出せず頭を掻き毟りそうになった、その時―――――
「・・・そんなに言うなら、契約する?」
戸惑った声色。
ハッとして顔を上げると、小首を傾げたティアが立っていた。
「は、へ?」
「私、よく解らないんだけど・・・契約ってどうするの?」
「えと・・・特に何かが必要な訳では、って待て!」
「?」
聞かれるままに答えていたライアーだったが、思い出したように制止を掛ける。
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